研究実績の概要 |
本年度は、宋、遼、金、元のうち、とくに宋、遼、金の宮廷空間で行われる儀式についての記述を、(A)に示す基本的な漢文史料から抽出、読解し、宮廷の空間構成や空間の使われ方について整理をおこなった。また、(B)に示す関連研究、とくに宮廷空間の復原図の検討を行った。 (A) 『遼史』営衛志、礼志、『金史』礼志、儀衛志、『宋史』礼志。(B) 郭湖生『中華古都(増訂再版)』空間出版社、2003年。傅熹年『傅熹年建築史論文集』文物出版社、第1版、1998年。Nancy Shatzman Steinhardt, Chinese Imperial City Planning, University of Hawaii Press, Honolulu, 1990。 于杰、于光度『金中都』北京出版社、1989年。 検討の結果、以下のことを確認した。(1)『宋史』、『遼史』、『金史』は、いずれも元代に編纂されたものであり、背景としての元朝宮廷の空間構成を、把握すべきことがわかってきた。(2)先行研究の成果を検討する過程で、利用できる漢文史料は一見出尽くしたように見えるが、じつはまだあると考えるに至った。というのも、元朝宮廷の場合、先行研究ではだいたい『日下旧聞考』に収められる史料を参照しているのだが、調べて見るとそれまで引用されてこなかった、たとえば元人文集などにも、宮廷空間に関する貴重な記述があることを発見したからである。(3)関連研究に提示された復原図は、一見すると、おおかた解明されているように見えたが、ひとつひとつの建物について検討していくと、いまなお検討の余地がありそうである。たとえば、遼南京、金中都、および元大都の三者の関係について、同じような地に造営された都城であるが、さらなる考察ができそうである。
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