研究課題/領域番号 |
19K04826
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
横手 義洋 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (10345100)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機的建築 |
研究実績の概要 |
今年度は、国内および海外の建築調査を実施するとともに、関連の資料も収集し、初年度の計画内容をおおむね達成することができた。 「有機的建築」の出自に関する情報については、米国アーツ・アンド・クラフツ協会機関誌(創刊より1910年代まで)を手がかりに、かなり広範に得ることができた。とくにこの時代の重要な一次史料である『The Craftsman』誌を手がかりに、米国におけるヨーロッパ建築の理解、新様式創造の応用に関する議論、理論的考察を抽出し、その展開過程を検証することもできた。F.L.ライトをはじめとするプレーリー・スクールの建築家たちについては、「有機的建築」の理論的貢献に限定し、米国、ヨーロッパにおける先行研究レビューを進めている段階である。 ヨーロッパにおける状況については、「有機的建築」と自然主義との接点が、ヨーロッパの自然科学(解剖学および自然史学)の見識の吸収、アール・ヌーヴォーとの接点、アーツ・アンド・クラフツ運動における伝統遵守の姿勢、東洋(日本)建築への興味と理解の進展のなかにあることを確認することができた。「有機的建築」に込められた主題のうち、建築と自然の親和性は、主として新しい建築表現や新しい装飾の探求作業として認められる一方、ランドスケープへの積極的な視線はあまり見られなかった。この点は、アメリカとヨーロッパの建築文化の伝統、環境風土の差として理解できる。 個別にヨーロッパ、アメリカの傾向を掴むことができたわけだが、ヨーロッパからアメリカ、アメリカからヨーロッパへの思想的理論的影響を視野に入れつつ、さらなる考察が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年内の時点で当初の年度計画を達成し、2020年に入り、年度計画を前倒しして研究展開できると考えていた。しかし、思わぬ新型コロナウィルス感染拡大の影響で、予定していた国内・海外研究調査がすべてキャンセルとなってしまい、当初の年度計画をなんとか達成したにとどまってしまった。とはいえ、全体の研究計画としては遅延なく順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も新型コロナウィルス感染拡大の状況を見ながら、柔軟に研究計画を組み替えていく必要を感じている。とくに、国内・海外研究調査が実施できない場合、すでに得られた調査資料およびデータの解析に注力し、オンラインによる情報収集によって、可能な限り当初の計画を達成できるように努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗が計画以上に順調であったため、年度末に前倒しで次年度以降の研究調査を実施するつもりであったが、新型コロナウィルス感染拡大により、調査計画がすべてキャンセルせざるを得なくなった。やむを得ない事態であるが、今後の状況を見極めつつ、得られた情報の分析を先取りして進めていく方針である。
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