研究課題/領域番号 |
19K04826
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
横手 義洋 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (10345100)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機的建築 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果概要を下記に記す。 ルイス・サリヴァン、フランク・ロイド・ライトについては既往研究においてかなり蓄積があるため、主としてプレーリー・スクールと称されるその他の建築家について調査を行った。その中で、ウィリアム・グレイ・パーセルとジョージ・グラント・エルムスリの業績に着目し、いくつかの住宅作品分析を行った。 中でもマサチューセッツ州ウッズ・ホールのブラッドリー邸(1911)は興味深い作品である。大西洋を一望できる半島の切っ先に位置する夏の別荘で、造形的にはバンガロー・スタイルの伝統下に位置づけられるものの、2階部分の伸びやかな水平性が外観上最大の特徴で、当時「エアプレーン・ハウス」と称されたほど大胆な造形である。平面的には1階部分をいわゆる十字形平面とするものの、2階部分が東西方向に若干オーバーハングすることで「飛行機」のごとく浮遊感を演出することに成功していると言える。1階南側に半円形状に突出する空間がリビングで、2階部分は主として寝室等のプライベート空間とされている。パーセルとエルムスリによる直後の別荘、デッカー邸(ミネトンカ湖畔、ミネソタ州、1912)と造形が酷似している点も見逃せない。 パーセルとエルムスリの作品は、フランク・ロイド・ライトの住宅、オープン・プランからの影響が指摘される作品群ではあるが、プレーリー・スクールとしての共通性と作家独自の個性についても明確にできるよう分析を継続させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
年度後半になって海外渡航が可能になり、海外研究調査の可能性がようやく出てきたが、その他の業務の関係で本研究における海外研究調査は実施できなかった。コロナ禍中と同様、文献による調査を継続しているところであるが、現地調査で得られる情報を完全に補うところまではいっておらず、進捗状況としては遅れていると評価せざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施できなかった海外研究調査を実施するべく準備を進めている。これまで現地の航空写真や映像、インターネットを通じた関連情報の収集はしてきたので、現地でしか得られない情報を明確にし、限られた時間を有効に活用していきたい。海外現地調査に際しては、コロナ禍で滞った3年間を取り戻すべくスケジュール調整しながら作業効率の向上を図っていくつもりである。研究全体の進捗が遅れている事実は変わらないので、今後の作業スケジュールを慎重に見極めながら、場合によっては研究期間の延長を検討することも視野に入れたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度と同様、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、海外研究調査実施の目処が年度末にしか立たなかった点、さらに、年度末に実施した海外研究調査において、現地のストライキの激化により航空便がキャンセルされたため、予定の行程を完遂できなかったことも予定使用額を下回った大きな要因である。今後はこれまでの作業進捗の遅延を取り戻すべく、必要な調査日程を適切に計画し、着実に実行していきたいと考える。
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