研究課題/領域番号 |
19K04832
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
脇田 督司 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80451441)
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研究分担者 |
永田 晴紀 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40281787)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハイブリッドロケット / 端面燃焼 / 液体酸化剤 / 固体燃焼 / 拡散火炎 / 推進 / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
本研究は、2015年度採択の挑戦的萌芽研究、および2017年度採択の基盤研究(C)おいて、ガス酸素供給で実証されてきた「端面燃焼式ハイブリッドロケット」を液体酸化剤供給でロケットとして成立させることを目指し、本年度は下記の3つについて研究を進めてきた。 1. 燃料後退速度(燃料が燃焼によって後退してく速度)の圧力依存性:ミリオーダの比較的大きな単一のポートを有するアクリル燃料を用いた液体酸素供給の燃焼を実現し、燃焼室の圧力に比例して燃料後退速度が増加することを明らかにし、酸化剤流速と燃料圧力の関数として燃料後退速度の実験式を構築した。これはガス酸素供給の燃焼特性と一致し、液体酸素を用いた場合でも高圧な燃焼条件下で高推力なロケットを実現可能なことを示した。 2. 複数の微小ポートを有する燃料を用いたロケット燃焼の予備検討:光造形3Dプリンタによって造形されたサブミリオーダの複数のポートを有する燃料に、液体酸素を供給した場合の燃焼実験を実施した。しかしながら、液体酸素の極低温による熱応力と3Dプリンタ造形特有の燃料の脆さのために、液体酸素による燃料の予冷段階から燃料に亀裂が発生し破損してしまうことが明らかになった。この問題を解決するために、次年度以降は熱応力が発生しない常温の推進剤である液体亜酸化窒素などを用いた燃焼の実現を目指す。 3. 圧力依存性の効果を考慮した燃料後退モデルの構築:燃料表面から火炎までの距離(消炎距離)に圧力の関数である化学反応速度を導入することで、圧力によって燃料への熱入力量が変化するようなモデルを構築し、圧力に比例した燃料後退速度の増加を再現できた。しかしながら、消炎距離の計算に用いられる火炎先端上流の未燃の燃料酸化剤混合ガスの流速のモデル化次第で、大きく結果が変わってくるため、次年度以降は数値計算による流速のオーダの見積もりとガス流速のモデル化を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に策定時に提案した下記3つのサブテーマに関して、研究実績と総合的に比較し、おおむね順調に進展していると判断した。 サブテーマ1:端面燃焼式固体燃料に液体酸素を直接供給した場合の基礎燃焼機構の解明(1, 2年目に取り組む内容); 液体酸素の酸化剤流速とポート径、および燃焼雰囲気の圧力の影響すべてを考慮した燃料後退速度モデルの構築ができたが、消炎距離の計算に用いる未燃の燃料酸化剤混合ガスの流速がうまくモデル化できておらず今後も継続して取り組む必要がある。 サブテーマ2:端面燃焼式固体燃料のガス化速度を液体酸素流量および雰囲気圧力の関数として取得(1年目に取り組む内容); 当初の計画どおり初年度である本年度に、燃料後退速度を酸化剤流速とポート径、および燃焼雰囲気の圧力の関数(実験式)として取得することができた。 サブテーマ3:ハイブリッドロケットとして成立する設計点を見出し、小型ロケットによる性能の実証(3年目に取り組む内容); 光造形3Dプリンタによって造形されたサブミリオーダの複数のポートを有する燃料を用いて、小型ロケットによる燃焼実験の予備実験を行うことができた。しかしながら、極低温の液体酸素の供給は燃料の破損を招くことがわかり、小型ロケットによる燃焼実験で液体酸素を用いるのは現実的でないことが明らかになった。今後は液体亜酸化窒素に切り替えて小型のロケット燃焼器を用いた実験を引き続き行う。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ2に関しては計画通り本年度内に完了している。今後は、次年度までに完了予定であるサブテーマ1に関して重点的に取り組み、燃料後退モデルを改良し完成させることを目標に基礎燃焼機構の解明を行う。サブテーマ3に関しては、液体酸素供給から液体亜酸化窒素供給に切り替えて予備実験を行い、最終年度実施予定の小型ロケット燃焼器を用いた実証実験に向けて基礎燃焼特性の取得に努めることで装置設計に向けたデータの蓄積に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた東京大学との打合せを,コロナの影響で次年度以降に繰り越した.また同様にコロナの影響で東京大学による燃料作成が不可能となったため,圧力依存取得に向けた一部実験を次年度以降に繰り越した.
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