クランクトアロー主翼を有する超音速機形状について、動的空力(姿勢変化角速度による空力特性)のメカニズム解明を目指して、機体模型に姿勢変化を与えつつ通風する「動的風洞試験」における煙流線法およびPIV法による流れの可視化、および非定常CFD解析によって、機体周りの流れ構造を調べた。所要の高速度ビデオカメラのレンタル期間の制約、および新型コロナ感染症対策としての実験活動制限のため、煙流線法を優先実施した。 1.煙流線法による流れ構造の解明: 2019年度には、ロール運動する機体模型の周囲流れについて、煙流線による可視化のノウハウを掴んだ。2020年度には、ロールまたはヨー運動する機体模型の周囲流れについて、高精細な煙流線映像を取得した。2021年度には、ヨー運動に的を絞り、主翼および垂直尾翼近傍の流線の挙動を捉えた。CFD解析結果と比較検証することによって、ヨー角速度に起因する動的空力の発生メカニズムを推定した。 2.非定常CFD解析による流れ構造の解明: 同等の条件で機体模型周りの流れをCFD解析によって解いた。2019年度には、ロール運動に的を絞って、流線、表面圧力分布、および空力微係数への機体各部位の寄与率を推算した。2020年度には、ヨー運動に的を絞って同様の事項を推算した。2021年度には、ヨー運動について追加解析を進め、解析結果の可視化画像を生成して風洞試験結果との比較に供した。 3.2次元PIV法による流れ構造の解明: 所要の高速度ビデオカメラ、高出力レーザー装置、および解析ソフトウエアを揃えたことから、今後PIV計測を本格的に実施する予定である。 4.総合的解析: 以上を総合して、ロール運動によるロールダンピング発生、ノーズ長によるロールダンピング劣化、ヨー運動によるローリングモーメント発生、およびノーズ長によるヨーダンピングの違いのメカニズムを、流線密度および機体表面圧力分布の観点から推定できた。
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