研究課題/領域番号 |
19K04836
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高橋 周平 岐阜大学, 工学部, 教授 (40293542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 固体燃焼 / 可燃限界 / 複合材 / 微小重力環境 |
研究実績の概要 |
本年度はCFRP複合材に対して,対向流速条件における限界酸素濃度を求めるための式をスケール解析の手法を用いて構築し,実験と比較することで検証を行った.単一素材プラスチックと異なり大きな熱伝導率を持つ炭素繊維が樹脂内に存在する場合には,形状が薄い材料に関しても固相内熱伝導の効果が大きく,火炎から直接気相中を通して熱伝導で伝熱される熱量の効果を上回ることがこれまでのモデルから示されていた.本年度は,この効果が火炎伝播挙動に与える影響を調べた.その結果,CFRPのような火炎伝播方向への固相内熱伝導が大きな材料においては,通常の熱的に薄い試料と異なり,火炎伝播速度が対向流速の増加とともに増加することが示された.これは,熱的に厚い固体試料で観察される火炎伝播挙動と類似しており,このメカニズムによりCFRPにおいては比較的高速の対向流を与えた場合に火炎伝播が促進されることが示唆された.これらの予想は,これまでに行われた強制対流を与えたCFRPの下方伝播実験において,自然対流の2倍程度の対向流を与えた条件で単一素材プラスチックと異なり限界酸素濃度がさらに低下すること,また同一酸素濃度においては対向流速の増加とともに火炎伝播速度が増加する事実と矛盾しない結果である.これはISS内部のような低周囲流速環境においては,CFRPは地上と比較してさらに難燃性となることが予想され,今後行われるISS軌道実験に向けての重要な知見である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ISS軌道実験の開始が1年間遅れたため,本研究で提案したモデルの検証が行えていなかったが,その間にCFRPのモデル構築などを進めることができた.軌道上実験自体は2022年5月より再開されたため,モデル予想と軌道上実験結果との比較を行い,今後は研究成果としてまとめていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
ISS軌道実験により,材料厚み,雰囲気圧力および流れ方向が及ぼす影響を長時間微小重力実験により検証できるため,モデルの改良および精度向上を見込むことができる.また,立体形状を持つ試料の伝熱モデルを構築し,火炎伝播モデルに組み込むことで,試料形状が火炎伝播速度御飛び限界酸素濃度に及ぼす影響を評価する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ISS軌道上実験の実施がほぼ1年遅れたため,モデルの検証作業が遅れていたが,2022年5月より再開したため,今後は宇宙実験の結果と本研究で提案したモデルとの比較・検討を進める.
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