研究課題/領域番号 |
19K04837
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 克彦 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30402481)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 宇宙機 / 姿勢制御 / CMG / 最適制御 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,宇宙機の姿勢制御アクチュエータが複数台の1軸ジンバルCMG(Control Moment Gyro)である場合に,宇宙機を高速かつ確実に姿勢変更させるためのフィードバック姿勢制御系を確立することである.1軸ジンバルCMGは,回転して角運動量を有するホイールをジンバル軸回りに回転させることで姿勢制御トルクを発生させるアクチュエータであり,ホイールのもつ角運動量の向きを変えることで大きなトルクを発生することができる.ただし,ジンバル軸の回転に伴ってトルクの向きが変わるので,姿勢制御トルクを各ジンバル角速度に分解するステアリング則が複雑になり,このことが1軸ジンバルCMGを用いる宇宙機の姿勢制御系の最大の問題点となっていた. 令和元年度は,宇宙機の姿勢誤差から直接ジンバル角を求めることでステアリング則を用いない新しい姿勢制御系の基本形を構築した.この姿勢制御系は宇宙機の姿勢誤差から最適なジンバル角を一定時間間隔で求めるため,1軸ジンバルCMGの台数が2台しかない場合にもフィードバック制御系を構築できる可能性があり,宇宙機の小型化,軽量化にも寄与できる. とくに令和元年度はCMGが2台の場合に,宇宙機に所定の姿勢変更を行わせるような最適軌道計画のアルゴリズム検討を行った.本研究では離散時間ごとに最適軌道計画を行うために,最適軌道計画の解が確実かつ連続的に高速に求められる必要がある.最適軌道計画ではCMGのジンバル角を時間関数として表現し,時間関数の係数を実時間で修正する方法を提案し,その実行可能性を地上実験で検証した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CMGが2台の場合の姿勢制御アルゴリズムを提案し,地上実験装置でその効果を確認した.地上実験の結果,CMGが2台であってもフィードバック姿勢制御が実現できること,ただし地上実験特有の重力トルク外乱の影響が大きく,姿勢変更後にも姿勢が変動することなどが明らかになった.この結果は論文にまとめて英文誌に投稿中である. また,CMGが4台の場合の実験を行うために,地上実験装置のための浮上テーブルを購入し,ハードウェア製作を行った.実験装置としてはほぼ想定通りの性能が得られたことで,ハードウェア面においては完成に近づいていると考えられる.とくに,地上制御実験装置の重力トルク外乱を最小限に抑える必要があり,重力トルクの原因となる重心ずれを精度よく同定し補償する補償方法の検討をあわせて実施した.この結果から,重心ずれを減少させることができる見込みである. 以上より,本研究課題はおおむね順調に推移していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
CMGが2台の場合については,ほぼ結果をまとめたため,今後はCMGが4台の場合のアルゴリズムの提案とそのシミュレーション,および地上実験装置による検証を行う.4台の場合の実験装置については,ハードウェア的にはほぼ完成しているため,今後はソフトウェアの搭載が中心的な課題となる.4台の場合のソフトウェアは線形計画法や二次計画法を用いることになるので,これらの,信頼性があって高速に実行できるコードを搭載することが必要である.このコードを搭載できしだい,地上実験を実施する.地上実験において,シミュレーションから想定される結果が得られた場合には,その結果を英語論文にまとめて投稿する予定である.
|