本研究の目的は,宇宙機の姿勢制御アクチュエータが複数台の1軸ジンバルCMG(Control Moment Gyro)である場合に,宇宙機を高速かつ確実に姿勢変更させるためのフィードバック姿勢制御系を確立することである.1軸ジンバルCMGは,回転して角運動量を有するホイールをジンバル軸回りに回転させることで姿勢制御トルクを発生させるアクチュエータであり,ホイールのもつ角運動量の向きを変えることで大きなトルクを発生することができる.ただし,ジンバル軸の回転に伴ってトルクの向きが変わるので,姿勢制御トルクを各ジンバル角速度に分解するステアリング則が複雑になり,このことが1軸ジンバルCMGを用いる宇宙機の姿勢制御系の最大の問題点となっていた. 令和3年度は,この研究のまとめとして,ピラミッド配置のCMGにおいてCMGが4台の場合,1台が故障して3台となった場合,2台が故障して2台となった場合の,いずれの場合においても,ほぼ同じアルゴリズムで宇宙機の姿勢制御が行えることを実験検証し,数値シミュレーション結果との比較検証を行った.その結果,実験結果とシミュレーション結果はほぼ同様のふるまいをすることが確認でき,開発したアルゴリズムの正当性を理論と実験の両面から示すことができたため,結果をまとめて英文論文誌に投稿した.この姿勢制御系は,CMGが故障などで使用できる台数が減少した場合にもそのままの形で適用でき,また,ステアリング則を用いないために,これまでのCMGを用いた姿勢制御系で問題となっていた特異点の存在についても考慮を払う必要がなく,宇宙機の小型化や姿勢制御系の信頼性向上に大きく寄与することができる.
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