研究課題/領域番号 |
19K04838
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
永井 弘人 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50510674)
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研究分担者 |
長崎 秀司 九州大学, 工学研究院, 助教 (00304741)
藤田 浩輝 日本文理大学, 工学部, 教授 (00315110)
有薗 仁 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (00371097)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 羽ばたき翼 / MAV / 複合領域設計 / ドローン / 生物規範工学 / 空力弾性 / 制御 / 最適化 |
研究実績の概要 |
本研究は,生物の柔軟で多機能な構造や設計を羽ばたき型超小型飛翔体に適用することで,その性能向上を図ることを目的としており,そのために羽ばたき機の流体/構造/機構/機体運動/制御など多分野を統合した複合領域解析技術を確立する.3年目の2021年度では,以下の研究を行った. (1)無尾翼の2枚翼型羽ばたきドローンの開発:3次元CADを用いた駆動機構の解析技術を確立し,機体に実装する制御基板および制御プログラムの設計開発を行った. (2)羽ばたき翼構造の最適化:翼に波型の断面形状を採用したコルゲート型羽ばたき翼の流体/構造連成解析を行い,流体力学的特性を損なわずに最適な構造異方性を与えるコルゲート形状を示し,その成果は学術論文として国際誌に掲載された.また,材料異方性を考慮した翼構造の検討を行った. (3)駆動機構部を考慮した弾性羽ばたき翼の解析技術の確立:従来の羽ばたき翼の設計解析では,翼のみを考慮して流体構造連成解析を行っていたが,実際には駆動機構部の弾性および慣性も応答や性能に大きな影響を与え,それらを含めて複合的に設計を行う必要がある.そのため,機構部の弾性および慣性を考慮した羽ばたき翼の解析技術を開発した. (4)数値最適化手法を用いた羽ばたき運動パターンの最適化:従来研究では,羽ばたき運動を正弦波や台形波などの理想化された波形で表して解析を行ってきたが,実際の翼の応答は高調波成分を含む複雑な応答となる.そこで本研究では,羽ばたき運動をフーリエ級数で表し,その係数を設計変数として羽ばたき運動パターンの数値最適設計を行った.その結果,最適な羽ばたき運動は台形波となるが,必ずしも理想的な台形波にならないとも,高い性能を発揮できることが明らかとなった.この結果を基にして,今後は最適な羽ばたき応答を実現する翼構造の検討を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鳥や昆虫などの生物は,軽量なシステムで優れた飛翔能力を発揮するが,それは流体/構造/機構/機体運動/制御などの多分野を統合した複合領域最適設計によって達成されていると考えられる.本研究では,その複合領域最適設計の基盤技術を確立し,現行の羽ばたき機の性能をさらに生物へと近づけることを目的としている.現在までに,翼の変形とそのまわりの流れを考慮した流体/構造連成解析,機構部と翼の連成を考慮した流体/構造/機構連成解析,機体の運動と翼の変形との連成を考慮した流体/構造/機体運動連成解析を行い,それらに基づく制御測の検討を行った.また,実機の開発として,3D-CADを用いた設計技術の確立,機体の通信・制御に関する基板設計およびプログラム開発を行った.
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今後の研究の推進方策 |
開発した機体の飛行試験を行い,種々の飛行データを取得して,実験結果から,複合領域分野に発生する様々な課題を洗い出し,それらのデータを複合領域解析に反映させ,より実際的な解析技術を確立すると共に,複合領域最適化によって,生物のように無駄の無い機体設計を探索する.実機の設計開発にあたっては,製造メーカーやドローンを運用する企業との連携を図り,生産性や運用の観点からの評価をフィードバックしながら,より実用的な機体の開発を目指す. また,これまでに開発した複合領域解析技術を用いて数値最適設計を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度予算で次年度使用額が生じた理由は,引き続き新型コロナウイルスの感染拡大に伴う学会や打合せの中止やオンライン化により旅費が発生しなかったことが主な原因である.移動再開後には研究者間の連携を促進すると共に,機体の開発の費用にも充当する.
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