静止軌道では人工衛星は帯電し放電する。静止軌道での表面帯電では、紫外線による光電子電流と宇宙プラズマによる数十keVまでの電子が支配的となり、太陽電池パネルの帯放電試験では主に電子ビームが使用されている。帯放電試験ではカバーガラスと太陽電池の放電が発生する際の電位差の閾値を計測するが、私が近年行った実験では電子ビームを用いた時よりも紫外線を使用した方が閾値電圧が低くなるという結果を得た。閾値電圧が異なると放電のエネルギーが違うため、帯放電試験に影響を与える。本研究では、紫外線と電子ビームでの閾値の違いを明らかにすることを目的としている。実験では、放電閾値に影響を与えると考えれらるカバーガラス端面の表面電位をマイクロメーターのオーダーで計測することで評価する。これはポッケルス効果を用いた光計測によって実現する。 酸化ケイ素ビスマス(BSO)結晶は光学結晶であり結晶内の電界が変化することでポッケルス効果により屈折率が変化する。BSO結晶に偏向したレーザー光を照射すると、結晶を透過したレーザー光に電界による屈折率の変化に比例した偏向位相差が生じる。この偏向位相差により透過光強度が変化し、透過光強度を計測することでBSO結晶内の電界が求まる。本年度は昨年度構築したポッケルス効果による表面電位計測系を用いて表面電位の2次元分布を得た。また紫外線と電子ビームによる表面帯電分布の違いについても確認することができた。さらに帯電解析ソフトでもその違いが明らかになった。
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