研究課題/領域番号 |
19K04841
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
坂上 昇史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70244655)
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研究分担者 |
新井 隆景 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10175945)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 航空宇宙流体力学 / 超音速乱流 / 超音速混合遷移 / 熱線流速計 / 混合計測 |
研究実績の概要 |
本研究は,熱線流速計による混合能評価法の確立と,縦渦による超音速混合において3次元的な乱流変動により異種流体間の接触面積が飛躍的に増大する混合遷移機構の解明を主な目的とする. 熱線による混合計測については,ヘリウムと空気の混合気を用いた超音速流中における校正時に熱線が破損するという問題があったが,原因を特定し,熱線の破損を防いで校正を行った.その結果,校正範囲内の質量流束が等しく濃度が異なる計測点において熱線の熱損失が等しくなる,という場合が現れた.この結果は,熱線の熱損失が計測流体の質量流束と熱伝導率に依存することを考えると不合理であり,混合計測が不可能であることを示している.その原因を特定するため,濃度・質量流束校正における熱線の熱損失を,強制対流熱伝達に基づいて出力予測を行った.ヘリウムは空気に比べて熱伝導率が大きく,濃度が増すにつれ熱線の熱損失は増加する.質量流束変化に対する熱損失変化の傾向は,ヘリウム濃度が低い場合,計測値と予測値は良い一致を示すが,濃度が増すにつれて,計測値が予測値よりも小さくなることを確認した.また,その原因は,小型超音速ノズルを用いた超音速流に対する熱線校正システムにおいて,ノズル内の流れが,ヘリウム濃度が増すにつれて空気流の場合と異なり,質量流束の推定に誤差が生じている可能性を確認した. また,熱線による混合評価の比較検討のため,縦渦による超音速乱流混合場に噴射した擬似燃料の濃度場をLIF(Laser Induced Fluorescence)法により計測するとともに,得られたLIF画像にPIV(Particle Image Velocimetry)法のアルゴリズムを適用して,速度場を同時計測することを試みた.その結果,トレーサー粒子を用いる通常のPIV法と同等の精度で速度分布が得られることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超音速流中での熱線計測は,湿度の高くなる時期には,大気中の水分の凝縮により熱線が破損するなど,計測が困難になるため,計測可能な時期が制限される.コロナ禍に伴う非常事態宣言などで,熱線計測可能な時期に長期間大学への入構が制限されて実験を十分に行えなかったため,やや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
熱線による濃度計測の校正時における問題については,シュリーレン可視化法による予備実験により,ヘリウム濃度が増すと超音速ノズル出口で剪断層がノズル壁に沿っていないことが確認された.そのため,ノズル出口での推定マッハ数が空気流の場合と大きく異なり,質量流束推定の誤差要因となる可能性が考えられる.これまでは,空気流による結果を基にノズル出口でのマッハ数や質量流束を推定していたが,混合ガスを用いた場合の小型超音速ノズル内流れを確認し,質量流束推定の精度を高める.また,本研究室で開発した熱線の瞬間熱損失を直接計測可能な新しい定電流型熱線流速計について,計測される熱損失の精度を向上させる方法について検討する. 超音速縦渦による混合遷移機構については,デバイスの形状やスケール,主流マッハ数を変更した場合について,空気流の場合と,疑似燃料としてヘリウムを噴射した場合の流れ場を,熱線流速計とPIVシステムにより詳細に計測し,混合遷移に関する知見を得るとともに,超音速混合を促進させる制御法について検討する.また,数値計算により確認された変動の発生位置やそのスケールが実験で観察されている変動構造とよく一致することから,実験における変動の発生やその成長・崩壊を再現できている可能性が考えられる.主流マッハ数や縦渦対導入デバイスの形状を様々に変更した条件でも数値計算を行い,実験結果の再現性を確認するとともに,撹乱の発生過程や,その成長・崩壊から混合遷移に至る過程について調べ,混合遷移を引き起こす不安定性について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:コロナ禍に伴う非常事態宣言などで,熱線計測可能な時期に長期間大学への入構が制限されたため実験を十分に行うことが出来ず,特にヘリウム・混合ガスの使用量が研究計画よりも少なかった.
使用計画:熱線の校正や疑似燃料として使用するヘリウムガスや混合ガスの価格が高騰しており,それらの購入に充当する.また, 実験結果を補足するとともに,実験が行えなくなった場合の代替手段として,CFDに使用するソフトウェアのライセンスを追加し,数値計算による流れ場の解析を強化する.
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