研究課題/領域番号 |
19K04846
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡辺 圭子 立命館大学, 理工学部, 教授 (80423599)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 磁気粘性流体 / 衝撃吸収 / 鎖状構造 |
研究実績の概要 |
磁場印加により、磁気粘性流体の内部では、磁場印加方向(磁力線の方向)に鎖状構造が形成され、流動特性が変化するため、圧力波伝播挙動に影響を与えることがわかっている。これまで実施してきた高速物体加速装置による衝突貫入実験では、球面圧力波が発生したため、鎖状構造の方向の影響を確認することが困難であった。そこで、平面圧力波を発生させることができる装置を独自に開発し、平面圧力波の伝播方向に対して、垂直または水平に磁場を印加させて鎖状構造を形成し、各場合の圧力波減衰について検討した。また、磁場印加装置については、液体窒素を用いて磁場印加装置のみを冷却することにより、磁気粘性流体は室温に保ったままで、これまでよりも高い磁場を発生させる装置を開発することに成功し、磁場強度の影響についても検討した。 その結果、磁場強度の上昇に伴い、圧力波の伝播速度が上昇することが確認された。伝播速度の上昇率は、磁場を圧力波の伝播方向に対して垂直に印加した場合よりも、水平に印加した場合の方が高くなることが確認され、鎖状構造形成による異方性に依存することがわかった。この傾向は粒子濃度の高い磁気粘性流体で顕著になることから、磁場印加による磁気粘性流体の体積弾性率の上昇や、伝播方向に並ぶ鎖状構造を形成する鉄粉粒子を伝播する圧力波が影響していることが示唆された。また、圧力波の減衰については、磁場強度が高いほど減衰率が大きくなることがわかった。鎖状構造の形成方向に関しては、垂直方向に比べ、平行方向に磁場を印加した方が減衰率は大きくなる傾向にあり、異方性の影響が示唆された。特に、鉄粉濃度が30 vol%の磁気粘性流体に対して、水平方向に50 mTの比較的強い磁場を印加した場合、急激に圧力波の減衰が大きくなることが確認され、粘度増加が影響しているものと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に続き、COVID-19の影響で実験研究の進捗が遅れた。また、研究を進める中で、新たな課題が見つかり、新しい装置の開発等が必要になったことも進捗に影響した。しかし、基礎的なデータの取得や検討を着実に進めることができたため、2022年度は最終目標を達成できるように研究を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
鎖状構造の形成が圧力波伝播挙動に大きく影響することがわかっているため、これまで取得したX線CTによる内部構造のデータ分析を早急に実施し、必要に応じて追加撮影等も行う。そして、磁場強度や粒子濃度の影響について定量的な検討を行うことにより、これまで得られた結果を説明する基礎原理を構築する。また、当初の予定通り磁束密度を高速で可変制御する方法も合わせて検討し、衝撃吸収性能の最適化も実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で、実験研究に遅れが生じ、補助事業期間延長承認申請を行ったため次年度使用額が生じた。 2022年度は、当該研究に使用する消耗品類を中心に購入する予定であるが、内部構造の観察のための追加撮影費および学会発表等の研究成果発信(参加登録費・旅費)にも使用する予定である。
|