研究課題/領域番号 |
19K04849
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
石井 昌憲 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (70359107)
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研究分担者 |
岡本 幸三 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 室長 (40584660)
久保田 拓志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 研究領域主幹 (90378927)
宮本 佳明 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (90612185)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドップラー風ライダー / 衛星 / 数値予報 / データ同化 / ライダーシミュレータ |
研究実績の概要 |
最終年度は、前年度実施したライダーシミュレーションの動作確認試験を踏まえ、ライダーシミュレーション実験を実施するにあたっての課題を見直した。課題を修正した後、空間分解能を向上した疑似真値場(2018年1月、8月)を用いて、高度分解能を変えたライダーシミュレーションや異なるレーザシステム(1.5ーμmと2-μm)によるライダーシミュレーションを実施した。ライダーシミュレーションで得られた結果を用いて、1ヶ月間のデータ同化実験を行い、数値予報へのインパクトを調査した。 高度分解能を2kmから1kmへ変えたライダーシミュレーションでは、WMOの要求精度は満たすものの信号対雑音比の劣化からと推定される風速性能の劣化の傾向があることが分かった。その一方で、航空機の安全運行の障害となる大気乱流の予測のためには、空間分解能を0.2-0.5kmにする必要がある事が分かった。 異なるレーザ波長(1.5-μmと2-μm)のシステムに異なるレーザシステム(1.5-μmと2-μm)によるデータ同化実験では、両システムともに数値予報に対してポジティブなインパクトを示した。各気象要素の改善度について調査したところ、予報時間初期を中心に波長1.5-μmレーザを用いるシステムでは最大3%程度、波長2-μmレーザを用いるシステムでは最大2%程度改善することが分かった。レーザシステム性能の違いにより、予報精度の改善に差が生じることが分かった。 宇宙から衛星搭載ドップラー風ライダーによる風観測を行い、数値予報と大気乱流予測にインパクトを与えるためには、観測高度帯と予測対象に応じて空間分解能を分けて観測できる衛星搭載ドップラー風ライダーとデータを解析できるアルゴリズム開発が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最終年度は、解像度の高い疑似真値場を用いて、複数の高度分解能によるライダーシミュレーションや異なるレーザシステムを用いたライダーシミュレーション、データ同化実験を実施することで、宇宙からライダーによる風観測を行う場合により最適なライダーシステムの評価と検討を実施出来たばかりでなく、複数のシナリオによるデータ同化実験を行うことで数値予報への効果的に調査することができ、データ同化実験においてこれまで用いられてきた品質管理手法の検証と評価を実施することができ、品質管理手法を向上させることが出来た。その結果、数値予報へのインパクトをより正確な評価につなげることが出来た。本研究の申請時に想定していなかった、大気乱流予測の観点から航空機運航業務に要求される空間分解能も見いだすことが出来た。以上の進捗状況から、研究計画の目標に向けて研究が推進することができ、想定以上の成果が得られた、と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の目標に向けて研究を推進し、予定通り3カ年の成果が得られたと考える。これまで、新型コロナウィルスにより国際会議での発表が行えなかったので、これまでに得られた研究成果を国際会議において積極的に発表を行う。 本研究に用いたシミュレータは、シミュレータ結果を利用するユーザー側の視点に立った特性評価が十分に実施されてこなかった。本研究において利用者の視点からシミュレータの特性について調査を進めたところ疑似信号生成プロセスにおけるアルゴリムに課題があることが明らかになってきた。今後は明らかになってきた疑似信号生成プロセスにおけるアルゴリムの改良を行いながら、シミュレータによる疑似衛星風観測性能評価の研究を推進して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウィルスの世界的流行の為、国内外の国際会議がオンラインで開催されたため旅費等を使用することが難しかったことによる。 令和4年度は、新型コロナウィルスに関する規制が緩和され、現地で開催されることが予想されるため、国内外の学会参加費及び旅費として使用する予定である。
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