研究課題/領域番号 |
19K04850
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
和田 大地 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (10770480)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 可変翼 / 光ファイバセンサ / 深層強化学習 / 機械学習 / 荷重同定 / 荷重低減 / 風洞試験 |
研究実績の概要 |
鳥のように翼の形状や面積を変形させる構造を持った翼を、可変翼という。可変翼を無人機に応用することで、新しい飛び方が可能になる。ピンポイントで着陸することや、空を長い時間帆翔し続けること、強風・悪天候でも安全に飛行することなどである。捜索や観測、擬似衛星など、新たな航空機能・将来産業へのインパクトが期待されている。 一般的にも強度設計・保証はモノの実現において不可欠だが、可変翼ではことさら重要な技術課題となる。駆動部・リンク部・大変形部などで構造負荷がクリティカルになるからだ。加えて複雑な構造・形状から、負荷の予測も難しい。一方、事前に余裕を持たせる設計のみに依存した対処では、重量増を招き、可変翼採用の効果・意義を消滅させてしまう。 そこで本研究では、“構造負荷を実測する技術”と“負荷を制御する技術”を構築・統合して、可変翼を用いた飛行技術の実現に貢献する。 本年度の研究では、先行研究を活用し、先進的な光ファイバセンサにより従来の翼構造の変形を効率的にセンシングし、その情報をニューラルネットワーク(NN)に入力することで、高精度・ロバストに揚力分布を同定するシステムを構築した。すなわち運用中の翼構造に、どのような荷重がかかっているか、どれほどの負荷がかかっているかを実測出来るようになった。そして深層強化学習により制御用のN N を生成し、実測された構造負荷に基づいて負荷を低減する制御技術を構築した。多舵面翼を用いた風洞試験の結果から、光ファイバセンシング・揚力分布同定・構造負荷制御の技術統合が可能であることを実験的に示した。 加えて可変翼の初期設計を完了した。鳥の翼のように開閉・ツイスト・スイープする3つの変形モードを統合できる見込みを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可変翼の設計を行い、鳥の翼のように開閉・ツイスト・スイープする3つの変形モードを統合できる見込みを得た。一方、当初の計画にあった、風洞試験に供するレベルの設計には届かなかった。構造強度、空力効率で満足のいく見込みが得られなかったためである。 次年度以降の実施を想定していた構造制御技術の構築について、大きな進展が得られた。深層強化学習アルゴリズムの一つであるD Q Nを応用し、多舵面翼(可変ではないが、多制御構造)の構造負荷を制御できることを、風洞試験にて実証した。光ファイバセンシング情報をもとに揚力分布の同定を行い、同定された揚力分布を制御できた。オンラインでこれらが可能であることが実験的に示され、本研究全体の実現性に大きな期待をもたらす結果となった。加えて、D Q Nとは異なる選択肢、A3Cの構築も完了した。 可変翼設計の進捗遅れと、深層強化学習・制御技術の計画を上回る進捗を鑑み、研究全体としては良好な進展を見せていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は可変翼の設計を進める。風洞試験モデルの製作も行うことを予定するが、製作環境が整わなければ、2021年度に製作を延期することも想定する。 揚力分布同定のための機械学習アルゴリズムおよび構造制御のための深層強化学習アルゴリズムについて、設計される可変翼の仕様に適用可能な学習系を構築する。深層強化学習においては、制御量(モーフィング駆動や舵面駆動量)と空力の非線形や、モデル不確かさを想定し、ロバストに制御できるニューラルネットワーク(ポリシー)を生成する。シミュレーションによる検証を行い、ニューラルネットワークの構造や学習アルゴリズム、その他ハイパーパラメータを最適化する。 2021年度に風洞試験を行い、技術実証を行う。
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