研究課題/領域番号 |
19K04852
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
北川 幸樹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (10575476)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハイブリッドロケット / 液体酸素 / 再生冷却 / 熱伝達 / 二相流 / ノズル / 熱流束 / 気化 |
研究実績の概要 |
固体の燃料と液体の酸化剤を用いたハイブリッドロケットエンジンにおいて酸化剤である 液体酸素を気化した上で、旋回流として燃焼室に噴射することで、高効率な推進力が得られる。気化方法として、液体酸素気化再生冷却ノズルを提案しており、そのノズルの詳細設計および実用化のために必要な精度の高い液体酸素気化再生冷却ノズルの設計に使用できる実用的な熱伝達評価式を構築することが目的である。 2019年度は、酸素の熱伝達率を計測するための熱伝達特性計測実験システムを設計、製作した。計測部は内径2.175mm、厚さ0.5mm、長さ200mmのステンレス管を用いることとし、管入口、出口での流体の温度、圧力を計測し、管の外壁面の上下に5ヶ所ずつ熱電対を設置し、温度計測を行える形態とした。酸素流量は実験装置下流で、コリオリ流量計で計測する形態とした。直流電源により最大8kWまでの電圧を印加し、ジュール加熱によってステンレス管を昇温し、細管内を流れる液体酸素を加熱できるようにした。その機能確認試験として、装置単体加熱試験とコールドフロー試験を実施し、適切に加熱できること、計測が可能であることを確認し、実験装置の運用方法も構築した。また、計測部の細菅を重力に対して垂直な水平方向とした条件での熱伝達特性計測実験を実施し、熱伝達特性を分析するための有用なデータの取得に成功した。さらに、今回設計製作した実験装置の問題点として、条件によってはキャビテーションが発生し酸素流量が正確に計測できないことを明らかにした。 2020年度は、実験実施拠点を変更する必要が生じたので、新拠点での実験実施場所の確保および整備を行った。また、2019年度の得られた実験データを整理し、国内学会および国際学会で成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、熱伝達特性計測実験とし、重力の影響で気相、液相の偏りが発生しないように計測部細管は地面に対して垂直とし下から上へ流す加熱計測実験および重力の影響を把握するために計測部を地面に対して角度を持たせて加熱計測実験を実施する予定であった。しかし、申請者の所属の異動があったため、新たな実験場所の確保および実験システムの再構築が必要となり、その対応に時間を要しており、実験を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新たな実験場所で実験するために実験システムの再構築を行う。また、2019年度で明らかになった酸素流量の計測の課題に対しては、流量計の位置を変更する改修を行い対応する。 亜臨界圧力領域での相変化を伴う液相および気相分布に偏りのある液体酸素流の熱伝達特性データを取得することが目的である。2021年度は、改修した熱伝達特性計測実験システムを用いて、供給圧力、酸素流量、加熱量をパラメータとし、流体の流れは、地面に対して垂直方向の場合と45°に傾けた場合に計測部を液体酸素が遡る場合および下る場合の4パターンの計測実験を実施する。2019年度に実施した地面に対して細管が水平の場合の結果と合わせて、気相割合や二相流の流動様式を考慮し、各状態での適切な整理式の検討を行い、ハイブリッドロケットでの液体酸素気化再生冷却ノズルの設計に使用可能な精度の高い新たな熱伝達評価式を確立していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の所属の異動があり、新たな実験場所の確保および実験システムの再構築が必要となり、その対応に時間を要しており、実験を実施することができなかったため、実験実施費用として計上していた予算は使用しなかった。また、学会発表もオンラインでの開催であったため、旅費の仕様は無かった。 2021年度は、実験システム構築および実験実施のための消耗品、成果公表のために予算を使用する計画である。
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