固体の燃料と液体の酸化剤を用いたハイブリッドロケットエンジンにおいて酸化剤である液体酸素を気化した上で、旋回流として燃焼室に噴射することで、高効率な推進力が得られる。気化方法として、液体酸素気化再生冷却ノズルを提案しており、そのノズルの詳細設計および実用化のために必要な精度の高い液体酸素気化再生冷却ノズルの設計に使用できる実用的な熱伝達評価式を構築することが目的である。 2020年度は、ステンレスの細管に電圧を印加しジュール加熱により細管内を流れる液体酸素を加熱する方式とした熱伝達特性計測実験システムを構築した。その実験システムの妥当性を確認するための機能確認試験として、コールドフロー試験および細管加熱試験を実施した。結果として、所定以上の流量を流せることおよび細管を加熱できることを確認した。一方で、一部条件でコリオリ流量計上流のバルブにおいてキャビテーションが発生し正確な流量計測ができないこと、細管壁温を計測する熱電対が印加電圧の影響を受けて正確に温度計測できないことが明らかになった。 2021年度は、実験実施拠点の変更に応じて、液体酸素供給設備の再構築を実施した。 2022年度、まずは、熱伝達特性計測実験システムの改良を実施した。具体的には、コリオリ流量計の設置位置のバルブ上流への変更および細管外壁の熱電対の取り付け方向を電圧がかかる方向に対して精度よく垂直になるように変更することを行った。機能確認試験を実施し、流量および細管壁温が精度良く計測できることを確認した。さらに、改良した実験システムを用いて、酸素流量、印加電圧、加圧圧力をパラメータとした水平方向に液体酸素を流す液体酸素熱伝達特性計測実験を実施し、熱伝達評価式を構築するために必要なデータを取得することに成功した。今後、液体酸素の流れ方向を変えた実験を実施し、データを拡充し、熱伝達評価式を整理する計画である。
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