研究課題/領域番号 |
19K04855
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
林田 和宏 北見工業大学, 工学部, 教授 (80369941)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 拡散燃焼 / すす粒子 / 硫黄分 / レーザラマン分光法 / レーザ誘起赤熱発光 |
研究実績の概要 |
舶用ディーゼル機関では,燃料油に含まれる硫黄分濃度により,排ガスに含まれるすす粒子の粒径が変化することが確認されているが,その理由については不明な点が多い.本研究では,燃料油中の硫黄分がすす粒子排出濃度やすす粒子径,すす粒子を構成する炭素結晶子サイズに及ぼす影響のメカニズムを明らかにすることを目的としている. 令和2年度は,昨年度に引き続き,火炎構造が比較的単純な気体燃料の層流拡散火炎を計測対象とした.燃料に含まれる硫黄分は,酸化雰囲気場では二酸化硫黄(SO2)に,還元雰囲気場では硫化水素(H2S)に転化する.昨年度はSO2を燃料に添加し実験を行ったため,今年度はSO2に加えてH2Sを燃料に添加し実験を行った. 燃料にはエチレン(C2H4)を用い,昨年度同様に,レーザ誘起赤熱発光法(LII)を用いて火炎内のすす粒子の二次元濃度分布を求めるとともに,火炎の各位置でサンプリングしたすす粒子の炭素結晶子サイズをレーザラマン分光法で解析した.今年度はさらに,時間分解レーザ誘起赤熱発光法(TiRe-LII)により,火炎内のすす一次粒子径の計測を行った. その結果,SO2,H2Sのいずれを添加した場合も火炎の上流から中流にかけてはすす濃度は低下し,すす一次粒子径とすす粒子を構成する炭素結晶子サイズが小さくなることが確認された.一方,火炎下流については,SO2添加時は無添加時よりもすす濃度と一次粒子径,炭素結晶子サイズが減少するものの,H2S添加時は逆に無添加時よりも若干増加する結果となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の主な目的は,燃料中の硫黄分がすす粒子特性に及ぼす影響を明らかにすることである.本年度は,SO2に加えてH2Sを燃料に添加した拡散火炎内のすす粒子について調査を行った.その結果,SO2とH2Sとでは,火炎内のすす粒子特性に及ぼす影響が異なることが明らかとなった.このことは,酸化雰囲気と還元雰囲気場では硫黄分とすす粒子の相互作用が異なることを示唆しており,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は酸化雰囲気と還元雰囲気場における硫黄分とすす粒子の相互作用のメカニズムの明確化を図る.さらに,実機ディーゼル機関を用いて実験を行い,硫黄分がエンジンアウトのすす粒子特性に及ぼす影響を解析する.そして,これまで計測対象としてきた層流拡散火炎とのすす粒子特性との相似性について評価する.
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