舶用ディーゼル機関では,燃料油に含まれる硫黄分濃度により,排ガスに含まれるすす粒子の粒径が変化することが確認されているが,その理由については不明な点が多い.本研究では,燃料油中の硫黄分がすす粒子排出濃度やすす粒子径,すす粒子を構成する炭素結晶子サイズに及ぼす影響のメカニズムを明らかにすることを目的としている. 前年度までは気体燃料の層流拡散火炎を計測対象としていたが,令和3年度は実機燃料と同じ相形態である液体燃料の拡散火炎を計測対象とした.燃料には軽油の平均分子量に近いトリデカン(C13H28)を用い,硫黄分として代表的な有機硫黄化合物であるベンゾチオフェン(C8H6S)を1mass%の割合で添加した.この硫黄分を添加したトリデカンをプール燃焼器で燃焼させ,安定な層流拡散火炎を形成した. 昨年度同様に,時間分解レーザ誘起赤熱発光法(TiRe-LII)を用いて火炎内におけるすす粒子の一次粒子径の計測を行った.また,火炎の各位置において石英ガラス製サンプリングプローブを用いてすす粒子を石英ガラスフィルタに採取し,採取したすす粒子の炭素結晶子サイズをレーザラマン分光法で解析した. その結果,硫黄分を添加した場合,火炎内におけるすす一次粒子径が減少するとともに,すす粒子を構成する炭素結晶子サイズが小さくなる結果が得られた.一方,火炎下流については,硫黄分添加時の方がすす一次粒子径が大きくなる結果が得られ,気体燃料の結果と同様の傾向が確認された.
|