研究課題/領域番号 |
19K04857
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
千賀 英敬 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60432522)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 渦励振 / 浮力体 |
研究実績の概要 |
深海底資源の掘削や移送に利用されるライザー管には、時々刻々変化する流れた作用する。流れによる管からの剥離渦は、渦励振(VIV)と呼ばれる管の振動現象を引き起こす。激しい渦励振が発生することで、ライザー管を用いた掘削や資源の移送作業の中断を余儀なくされる。ライザー管に取り付けられる浮力体自身に、渦励振を軽減する性能を持たせることを目的とし、浮力体の適切な形状を検討するために、小型回流水槽における模型実験を実施した。その際、浮力体模型の形状には、管の自重影響を軽減するために適切な浮力を有し、潮流に対する抗力が過大とならず、横置きで安全に保管が可能な形状である、作業時に破損し難い形状であるなどの制約条件をつけている。 3DCADにて作成した模型データを3Dプリンタにて製作し、小型回流水槽内にて模型の両端を固定・バネ支持の2条件にて、模型に働く抗力や揚力、また模型の運動を計測した。流れに対する指向性を無くすことを念頭に置き、浮力体形状には螺旋状に凹凸や形状の変化をつける方針とした。螺旋状の溝を掘る場合、溝の深さと幅が渦励振の軽減性能に影響を与えるが、溝による浮力体の体積の減少は浮力量の減少につながるため、最適な溝の形状については更なる検討が必要である。 また、数値計算手法として、これまで自身で開発してきた3次元離散渦法と有限体積法を用いた弱連成の手法以外に、OpenFOAMを用いた手法に着手し、基礎的な部分を構築した。今後は、小型回流水槽での実験条件と同じ、浮力体模型の両端をバネ支持した状態での模型の運動や模型に働く流体力の推定が可能となるように改良していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで自身で開発してきた3次元離散渦法と有限体積法を用いた弱連成の手法以外に、OpenFOAMを用いた手法に着手したため、数値計算面の進捗状況のみやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、浮力体に要求される性能を満たした上で、渦励振を軽減可能と考えられる浮力体形状を考案し、小型回流水槽にて渦励振軽減性能を検証する。小型回流水槽にてその性能が確認できた形状について、高レイノルズ数下での性能を検証するため、サイズをあげた模型を用いて、回流水槽にて実験を行う。計測結果を解析し、考案した浮力体模型の渦励振軽減性能を評価する。得られた解析結果は数値計算手法の精度検証に利用する。 OpenFOAMを用いた数値計算法について、浮力体の両端固定条件下の抗力・揚力係数について、実験結果との比較を行う。その後、浮力体の両端バネ支持条件下においても推定が可能となるように改良を進める。その後、渦励振を含めた浮力体の2次元的な運動について、実験結果との比較を行う。必要に応じて回流水槽にて追加実験を行い、任意形状の浮力体に対する挙動推定手法を確立し、その精度向上を図る。 船舶海洋試験水槽にて浮力体模型を曳航し、実機により近い高レイノルズ数条件下での実験を行う。この際、適切な長さで分割した浮力体模型をバネで連結することで、ライザー管の高次振動モードの励起を再現可能にする。これらの実験結果を用い、任意浮力体形状の挙動推定手法の最終的な精度検証を行う。 最後に、考案した浮力体形状について、実機レベルの条件下での渦励振軽減性能を数値計算にて検証し、その形状が実機レベルで有効であることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
回流水槽での実験用に、現所有のPIVレーザーよりも高出力であるPIVレーザーの購入を計画していたが、申請した予算から減額された交付額となったため、購入が不可であった。実験を行う回流水槽は屋外のテント内に設置されているため、現所有のPIVレーザーのスリット部分を細くする外部パーツの取り付けや、別途暗幕を購入し、回流水槽での実験に支障が生じないように検討する。
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