研究実績の概要 |
海底の掘削や資源開発の分野において用いられているライザー管やパイプラインには,流れや構造物自身の運動によって流場に生じた渦による渦励振(Vortex-induced vibration, VIV)と呼ばれる振動が発生する.渦励振は高周波の振動成分を含み,構造物の疲労破壊の一因となりうる.また,渦励振の発生により構造物に働く抗力が増加し,菅の大変形をもたらすため,抑制すべき現象である. 本研究では,ライザー管が使用される状況を鑑み,ライザー管に取り付けが必要不可欠な浮力体自身に渦励振の軽減性能を持たせることを検討した.螺旋状の溝を有する浮力体形状について,回流水槽における高いレイノルズ数条件下および,曳航水槽における3mの模型の渦励振の軽減性能について実験で検証した. 回流水槽での実験結果より,模型の両端固定条件下で円柱断面の浮力体と比較して抗力を減少することが可能な螺旋溝であっても,適切な螺旋溝でなければ円柱形状と同程度の振幅の渦励振が発生すること,また浮力体に螺旋の溝を掘ることで同一外径の円柱形状よりも浮力は減少するが,異なる螺旋溝を有した同一体積の形状であれば,溝の幅よりも深さのほうが渦励振の軽減性能に効くことを示した. 曳航水槽での実験では,本研究で用いた螺旋溝を有する浮力体は渦励振による振動振幅を7割程度軽減可能なこと,同形状は主流方向の抗力も軽減可能であることを示した.一方で,適切な螺旋溝を有する浮力体は,渦励振の振動振幅を軽減可能ではあるが,発生する渦励振には周期性が見られた.今回の実験では模型全長にわたり流速は一定,螺旋溝の幅と深さも長手方向に一定であるため,近傍の渦の剥離位置はずらせているが,長手方向のいずれかの位置において渦の剥離位置が揃ったことが原因だと考えられる.長手方向に螺旋のパラメーターを変更することで,渦励振の周期性を抑えることが可能と考える.
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