研究課題/領域番号 |
19K04858
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
牧 敦生 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50556496)
|
研究分担者 |
梅田 直哉 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20314370)
秋本 洋平 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20709654)
白川 真一 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 講師 (90633272)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 機械学習 / 強化学習 / システム同定 / 経路追従制御 / 大域的最適化 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、大きく以下に示す4つの観点から研究を行った。 (1)オフラインでの着桟航路の計画法について検討した。ここでは、船の周囲に速度に応じて適切に変化するバンパー領域を設け、船長航路に匹敵する現実的な着桟航路の計画をオフラインで行う手法を確立した。ここでは着桟・離桟いずれをも対象とし、提案した手法によりその経路計画が自動化できることを示した。 (2)前年度より継続して実施している、動的モデルの推定手法及び逆推定手法(いわゆるシステム同定手法)について検討した。ここではシミュレーション環境下で制御則を検討可能とするモデルを得ることを目的とし、CFD(数値計算力学)、大域的最適化や機械学習を用いて動的モデルの逆推定を行った。これにより、特に、後者のニューラルネットで動的モデルを近似する計算法は、モデルの表現力が高いため、学習用データがある程度与えられた状況では極めて高い性能を示すことが分かった。 (3)着桟制御をオンラインでゼロから行うことが難しいため、オフラインでの計画経路を辿る、トラッキング制御手法について検討を行った。ここではPID制御でのトラッキング制御手法に加え、リアルタイムである程度広範な最適化を行って制御入力を最適化する手法、浅いニューラル・ネットワークを用いて制御入力を算出する方法、強化学習により制御入力を算出する手法について検討した。このうち、リアルタイムで大域的最適化を行う手法については、模型船を用いた実験的な検証も一部実施した。このうち、ネットワークで近似された制御器は高い性能を示すことが分かった。 (4)現在の状態量を精度よく推定するために、非線形カルマンフィルターを適用した。状態空間モデルが非線形であっても、よく機能することが分かった。 今後は(3)に示したオンライン制御手法のより一層深化させる研究が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、オフライン制御・システム同定・オンライン制御手法・信号処理のいずれの検討についても想定通り、乃至やや想定以上の進捗を得たものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は以下の観点から研究を実施する。 (1)動的モデルの推定には、物理的性質・特質を理解することが必要である。特に、船体やプロペラ、舵周りの流体的性質が把握できれば、動的モデルにその影響を陽な形で組み込むことも可能になる。そこで、CFDにより低速操縦下の船体近傍の流体的性質を明らかにすることを試みる。特に、着桟時に大きな威力を発揮する特殊舵の一つVecTwin舵について、着桟操船を模擬した計算を行う、VecTwin舵には様々な操舵パターンが存在するため、これらを定量的に推定できるモデルをCFDでの知見を基に確立する。 (2)昨年度より詳細に検討を開始したリアルタイム制御について、これをより深化させる。まず、PID制御を用いる方法については、オフラインで得られた着桟の計画軌道をたどる、いわゆるトラッキング制御手法を主軸として、オンラインでの着桟を行う。一方、機械学習を用いる方法については、昨年度実施した浅いネットワークを用いる方法について、特徴量分析を行い、より適切な入力を選択することでより性能を向上させる。また、強化学習を用いる方法についても、アルゴリズムや学習方法の見直しなどにより、より性能の高い制御アルゴリズムを求めることを試みる。これらを用いたトラッキング制御に関する実験を大阪大学の実験池で模型船を用いて行い、性能を比較・検証する。 (3)非線形な状態空間モデルについても適用可能なカルマンフィルターについて、よりその検討を進め、(1)の動的モデルの推定により得られた高度な状態空間モデルを適用することなどにより、より高いレベルの信号処理の実現を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
論文の投稿及び実験に必要な機材を令和3年度に実施するため、それに相当すると考えられる程度の金額を次年度に繰り越した。
|