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2019 年度 実施状況報告書

海上安全に貢献する海洋クラウドとハイブリッド型AISシステムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K04862
研究機関弓削商船高等専門学校

研究代表者

長尾 和彦  弓削商船高等専門学校, 情報工学科, 教授 (90217969)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードスマートフォン / LPWA / BLE / プレジャーボート / AIS / GPS / 電波強度
研究実績の概要

日本は四方を海に囲まれた海洋国家であり、船舶は重要な輸送手段である。その安全航行は国策上重要な課題である。一方、船舶事故は減少傾向にあるものの、毎年2000年以上発生しており、その8割以上が小型船舶が関係するものである。平成30年度小型船舶検査機構の調査によれば、小型船舶の在籍船数は32万隻と、非常に多くの船舶が国内に存在している。AIS(automatic identification system)は船舶の船名、船主、位置、進路などをVHF波で送受信し、船舶間、陸上間で情報交換を行うシステムであり、大型船舶には設置が義務付けられ事故現象に貢献しているが、設置義務のない小型船舶には普及していない状況が続いている。我々は、小型船舶を対象としたスマートフォンを用いたAIS代替システムの開発を行っている。これまでにスマートフォンによるプロトタイプシステムの開発、海上における通信実験、既存AISシステムとの統合、スマートフォンが利用できないエリアを安価に接続するためLPWAの利用可能性について検討を進めている。
令和元年度は、海上におけるLPWAの通信速度・距離などの実地調査、LTE(スマートフォン)の通信可能範囲、360度カメラによる海上漂流物の自動検出、船舶上におけるBLEデバイスを用いた転落検知など船舶航行支援に関する研究を多角的に実施した。これらの研究成果は学会発表(査読あり1件、査読なし9件)等で報告を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和元年度は、小型船舶の安全航行に関わる以下の調査を実施した。以下に実施内容を示す。
(1) スマートフォンの運用条件の調査:平成28年から継続している瀬戸内海しまなみエリアの通信環境調査を行い、従来と同様に通信できないエリアが存在すること、キャリアによって通信範囲が異なることを確認した。(2)LPWAによる海上通信実験:弓削島の各地域にLPWA発信器を設置し、陸上及び海上での電波受信状況について調査を行い、遠距離まで到達可能であることを確認した。(3)LPWAを用いた航行支援システムの設計:LPWAは通信速度が低いことkら多くのデータをやりとりできない。このため、ビーコン形式にLPWAを用いて他船の存在を検知する航行支援システムの設計を行った。(4)LPWA航行支援システム用LPWAデバイスの開発:愛媛大学・NICTとの共同研究により、NICTが開発したドローン用LPWAデバイスの船舶への利用について検討を行なった。(5)ビーコンとしてのBLEデバイスの利用に関する調査:多くのBLEデバイスを持ち歩くようになっている。BLEデバイスはプライバシー保護の観点からMACアドレス等の秘匿が推奨されているが、多くの端末が従っていないことを確認した。これを用いて、BLEデバイスと乗船者を紐つけ、乗船時の安全確認システムを設計を行なった。(6)ハイブリット型AISシステムに適したデータベースサーバの設計と性能評価:AIS、スマートフォン、LPWAなど様々なシステムから船舶情報がサーバに集約されなければならない。瀬戸内海の船舶数を基にサーバ設計と検証を行った。(7)簡易AIS受信機の開発と性能評価:USBデジタルチューナと小型マイコンにより、より安価な受信機を構築、通常製品と同等の性能が得られることを確認した。

今後の研究の推進方策

令和2年度は開発フェーズと運用フェーズの一部と設定し、システムの開発・改良、電波強度計測の実施、ハイブリット型AISサーバの試験運用を実施する。
(1)LPWAのビーコン利用によるシステムの実装:通常入手できるLPWA発信機をビーコンとし、BLEでスマートフォンと接続、双方の存在が確認できるシステムを構築する。
(2)瀬戸内海における電波強度計測と装置の開発:例年実施している電波強度測定実験を実施し、状況を確認する。また、一部のスマートフォンでは、電波強度の取得ができないため、代替装置の開発を行う。
(3)実験用AIS用サーバの運用:実験用AISサーバを設置して、データの継続的な収集を実現する。端末については、研究協力者を公募することを検討する。

次年度使用額が生じた理由

2020年度3月に予定されていた学会発表がコロナ対策のためオンライン開催に変更されたため、使用予定の旅費が未執行となったため次年度使用額が発生した。
令和2年度についても、元年度と同様の研究計画と学会発表を予定しているため、物品費と旅費に充当して執行する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (10件)

  • [学会発表] 小型船舶航行支援システム用データベースサーバの要求定義に関する考察2020

    • 著者名/発表者名
      長尾和彦, 瀬尾敦生, 杉本大志, 都築伸二
    • 学会等名
      日本航海学会
  • [学会発表] BLE デバイスを用いた海中転落検知システムの構築2020

    • 著者名/発表者名
      黒飛達也, 長尾和彦
    • 学会等名
      情報処理学会第82回全国大会
  • [学会発表] 360 度カメラと機械学習による海上漂流物検知に関する研究2020

    • 著者名/発表者名
      金井彩花, 長尾和彦
    • 学会等名
      情報処理学会第82回全国大会
  • [学会発表] BLE 端末における ID 追跡可能性に関する検討2020

    • 著者名/発表者名
      小山 祐佳, 伊藤 清里菜, 長尾 和彦
    • 学会等名
      情報処理学会第82回全国大会
  • [学会発表] 小型船舶航行支援用データベースサーバの検討2020

    • 著者名/発表者名
      長尾 和彦, 金井 彩花
    • 学会等名
      情報処理学会第82回全国大会
  • [学会発表] BLE 検知による紛失物発見システムの開発2020

    • 著者名/発表者名
      伊藤 清里菜, 小山 祐佳,岸田 一希, 金谷 咲弥, 本田 渓太, 長尾 和彦
    • 学会等名
      情報処理学会第82回全国大会
  • [学会発表] AIS ネットワーク構築のための小型受信機の開発と性能評価2019

    • 著者名/発表者名
      長尾 和彦, 瀬尾 敦生
    • 学会等名
      日本航海学会
  • [学会発表] BLE デバイスを用いた海中転落事故検知システムの構築2019

    • 著者名/発表者名
      黒飛 達也, 長尾 和彦
    • 学会等名
      電気関係学会四国支部連合大会
  • [学会発表] BLE 端末における ID 追跡可能性に関する検討2019

    • 著者名/発表者名
      小山 祐佳, 伊藤 清里菜, 長尾 和彦
    • 学会等名
      電気関係学会四国支部連合大会
  • [学会発表] LPWA を用いた船舶位置同定システムに関する考察2019

    • 著者名/発表者名
      長尾和彦
    • 学会等名
      FIT2019

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公開日: 2021-01-27  

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