船舶は世界中の国々を結ぶ重要な交通手段である。その一方で船舶事故は海上交通の重要な課題となっている。海上保安庁の調査によると、2023年度の日本における船舶事故は1799件に及び、そのうち小型船舶の事故は8割以上を占めている。 船舶事故を未然に防ぐための対策として船舶自動識別装置(AIS:Automatic Identification System)がある。AISは船舶の識別符号、種類、位置、進路、速力、航行状態などをVHF帯電波で送受信し、船舶および陸上局と情報交換を行うシステムである。大型船舶には設置が義務付けられており、事故防止に一定の効果が確認されているが、小型船舶には搭載義務がないことから普及が進んでいない。我々は小型船舶を対象としたスマートフォンで動作する小型船舶航行支援システムの研究・開発を行っている。海上にはLTE通信が利用できないエリアが存在し、利用できない場合がある。国土交通省では、海上での船舶に対する スマートフォンアプリ活用のためのガイドラインを発表しており、これにそって航行支援システムが複数提案されているがいずれも普及に至っていない。本研究では、自船及び他船の船舶情報を収集するモジュールと船舶情報を表示するスマートフォンアプリを用いた航行支援システムの開発を行うとともに、プライバシー情報の取扱いなど普及を阻む原因についても検討を行った。これらの研究成果は学会等で発表を行なった。
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