船体や海洋構造物まわりの水位分布の計測は状態モニタリングの重要項目であり、これまで船体や海洋構造物まわりの水位変化を実時間で同時に計測する手法は様々提案されているが決定打となる低コストで実現できる手法は未だ存在しない。そこで本研究では浮体表面にセンサ電極列を貼付ける原理の異なる2つの水位計測法の組み合わせを提案した。一つの電気抵抗法は雑音や電気的特性から計測距離が長くなる場合不利なケースが想定された。そこでもう一つの方式である長距離の計測に向いた時間領域反射法(TDR)との組み合わせで相互補完するシステムを着想し、それぞれについて空間的な水位計群として浮体表面の水位変化が有効に計測できるか実験により試みた。 (1)導電性材料を用いた電気抵抗式水位計群システム 一次元で造波した水槽において模型船を航走させてそのときの船体動揺と船側水位変化を計測する実験を行った。模型船船首側面付近には導電性材料で出来た複数のセンサを等間隔で塗布または貼付け、計測した電気抵抗式水位計群のそれぞれの水位変化から船体動揺を分離してプロットした各センサ位置での水位の時系列データの変化と、この系の入力である出会い波波高との比較を行い、良好に一致することから水位計群の計測値を空間的にプロットすることで船体側面に生じた波を再現することが出来るものと類推できる。 (2)TDR法を用いたパルス信号による水位計群システム ケーブルの断線検出などに利用されているTDR(時間領域反射法)を水位計測に利用できるか試行を行った。(1)と同様に水槽で一次元の造波を行い、模型船船首付近側面に複数配置したセンサで空間的な水位変化の計測の試行を行った。信号反射のデータ時系列として得られるため、これから水位成分を取り出すアルゴリズムの開発を行った。計測データの同定の部分に解決すべき問題が残りリアルタイム計測の実現には至らなかった。
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