本研究の目的は、非構造格子ベースのソルバーに比べ低い計算負荷(=少ないセル数)で、かつ気液界面捕獲にシンプルかつ高精度(=PLIC法等に比べ演算回数が少なくかつ同程度の空間精度)な手法を用いることで、構造格子ベースのソルバーを用い舶用プロペラ周りに発生するキャビテーションを計算するCFDコードを開発することであった。 最終年度では、前年度に見つかったCFDソルバーについての不具合修正に注力した。具体的にはNichols (2002)の方法を参考として、速度場・圧力場カップリングに疑似圧縮法を用いたソルバーの、気液二相化を行った。但し、Nichols (2022)は圧力・速度およびvolume fractionを1つのmatrixに入れて解くのに対し、本手法では圧力・速度のみを1つのmatrixに入れて解き、volume fractionおよび乱流量については分離解法とした。特にvolume fractionについては、時間積分に陽解法を使用していることから、運動量方程式とのカップリングを弱連成(運動量方程式の時間進行と、volume fractionについての時間進行を交互に行う)とした。 この結果、非一様流中で作動する舶用プロペラに発生するキャビテーション範囲を、前年度に比べロバストに推定できるようになった。省エネ付加物の有無が、キャビテーション発生範囲に影響を及ぼすか否かも、粘性CFD計算により評価可能となった。また、4象限試験中(具体的には前進逆転状態)におけるキャビテーション発生範囲推定も、可能となった。しかし、キャビテーション発生量の定量的な検証、および高いレイノルズ数(O(1e6)以上)におけるキャビテーション計算の安定性については未だ改善の余地があり、今後の検討課題としたい。
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