研究実績の概要 |
昨年度、防食塗膜の防食評価に用いられるJIS K5600-7-2:1999「塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性-第2節:耐湿性(連続結露法)」の50℃95%RHを吸水温度条件として吸水後乾燥回復試験を実施したところ、この規格では暴露時間は規定されておらず、連続暴露では通常の環境に比べ劣化が促進され、内航船では生じない高温高湿条件となり、被着体が発錆に至った。よって、研究代表者らが過去に実施した実船での耐久性試験により得られた温湿度履歴を鑑み、今年度は、50℃80%RH、50℃90%RH、65℃90%RHの温湿度条件で再評価を行った。90日劣化後の強度保持率は、それぞれ73%, 58%, 42%で、いずれの被着体も発錆には至ったものの、50℃80%RHの場合はわずかで、その後の23℃50%RH条件下での乾燥によって50℃80%RHの場合は強度回復が生じ、90日乾燥後の強度保持率は、それぞれ88%, 55%, 39%であった。50℃90%RHと65℃90%RHの場合も、より湿度条件の厳しい50℃95%RHでは乾燥中も強度保持率が低下したのとは異なり、強度回復は生じなかったものの、乾燥中の強度保持率は概ね一定であった。一方、90日劣化後の変動係数は、それぞれ0.080, 0.045, 0.090、その後90日乾燥後の変動係数は、それぞれ0.16, 0.12, 0.24で、発錆に至っても変動係数(標準偏差/平均強度)は小さく信頼性は十分である。 耐候性試験はJIS-K-7350-2:2008「プラスチック-実験室光源による暴露試験方法-第2部:キセノンアークランプ」を参照して実施した。2,000時間劣化後の強度保持率は86%で1,000時間劣化後の95%から10%ほど低下した。2,000時間劣化後の変動係数は0.16で、変動係数は小さく信頼性は十分である。
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