本研究では、組織におけるマネジメントシステム運用の実態把握、改善と向上に有効な分析手法、業務改善や意思決定にも役立つ情報をわかりやすく伝える方法の実現を目的としている。最終年度では、研究期間2年目までに定義したファジィデータベースを基盤とし、効果的な分析インタフェースと分析手法を実現することが課題となっていた。そのため、インタフェースのベース技術であるファジィグラフ表現において、分析対象となる要素の関係性が把握しづらい部分の改善を中心に取り組んだ。ノードを1つのクラスタとしてまとめて表示することや、レベルに応じた関係性の表示と非表示の選択機能など、多様な分析への対応ができるようにした。これらにより、業務データや業務担当者の関係性をノードやクラスタ単位で視覚的に捉えることが可能となった。そして、実際の業務データを用いて、いくつかの分析結果を示し、分析手法の提案を行った。 本研究の特色は、マネジメントシステム運用を対象にしていることと、ユーザ属性を活かすアプローチをすることであった。マネジメントシステム関連文書とそれ以外の業務データを分析対象とすることで、各プロセスとの関係性を可視化することができるようになった。そして、ユーザ属性の活用として、データをどのような立場の人が作成したかを学習させることで、関連業務を識別できるニューラルネットワークの構築に成功し、ファジィ関係としてそれらの関係性を定義した。最終的に、マネジメントシステム運用プロセス、業務内容、業務担当者の関係性をファジィグラフとして可視化し、分析する手法を現実のものとすることができた。本事業の目的である有効な分析手法を、計画で示したとおり、グラフ理論とファジィ理論の枠組みをベースとて機械学習を取り入れることで実現し、さらなる発展と応用も期待できるマネジメントシステム運用を対象とした分析システムを構築できた。
|