研究課題/領域番号 |
19K04882
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
稲川 敬介 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (50410759)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 救急車 / シミュレーション / 最適配置 / 都市計画・建築計画 / 政策研究 / 救命 / モデル化 / オペレーションズ・リサーチ |
研究実績の概要 |
研究計画二年度目の研究内容は,救急自動車(以下,救急車)の将来需要予測を想定した救急車の配置に関する基礎研究をおこなった.人口減少が著しい地方部においては,人口減少に伴い,さまざまな施設が閉鎖・削減されることが予想されることから,施設数の変化が住民の利便性に与える影響について分析をおこなった.また,老朽化により建て替えになる消防署をより適切な場所に移転するという試みについても分析をおこなった.これらに関する具体的な取り組みと活動を以下にまとめる. 1.施設が削減される場合を想定し,施設が削減された場合の住民の移動距離の変化について分析し,削減率に応じたアクセシビリティを計算した.これらの結果をまとめて,ORによる大規模インフラストラクチャー分析研究会2019年度最終報告書に文書として報告した.また,消防施設の削減計画の例について,日本経営数学会第42回全国研究大会にて口頭発表し,同時に日本経営数学会第42回全国研究大会報告要旨集(pp.13-18)に文書としてまとめて報告した.さらに,施設削減計画のロードマップ作成手法について分析と数値実験をおこない,日本オペレーションズ・リサーチ学会東北支部事業「東北ORセミナー2020;若手研究交流会」にて,口頭発表をおこなった.また,地域住民に対する講演会「地域の明日を考える;経営セミナー」にて,同じく口頭発表をおこなうと共に,2ページの文書としてまとめて報告した. 2.救急車の格納施設として,消防署の最適配置について考えた.特に,耐用年数による建て替えを想定した再配置について考察し,日本オペレーションズ・リサーチ学会東北支部事業「東北ORセミナー2020;若手研究交流会」にて,口頭発表をおこなった.また,秋田県由利本荘市の事例を用いて,地域住民に対する講演会「地域の明日を考える;経営セミナー」にて,同じく口頭発表をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画二年度目の主な研究内容は,救急車に関する将来需要予測を想定した基礎研究をおこなうことと,大規模システムをフレキシブルに取り扱えるようなシミュレータの基礎部分を開発することであった. 初めに,今後のさまざまな研究の基盤となる救急車システムに関するGIS(地理情報システム)の作成をおこなった.まず,秋田県由利本荘市のみについて,救急車を保有している消防署のデータと,住民データと道路網を統合し,基盤となるGISを構築した.この部分については,順調に進展している. 将来需要予測を想定した基礎研究についても,おおむね順調に進展している.将来の救急需要を,仮に将来人口と設定して,将来需要に対応する配置モデルについての分析をおこなった.人口減少が著しい地方部においては,人口減少に伴い,さまざまな施設が閉鎖・削減されることが予想される.救急車,あるいはその格納施設としての消防署においても,施設数の変化が考えられる.これらの状況に対して,施設数の変化が住民の利便性に与える影響について分析をおこなった.また,老朽化により建て替えになる消防署を,より適切な場所に移転することにより,配置全体を改善できないかという試みについても分析をおこなった.これらの研究については,口頭発表をおこなうと共に,文書として報告することができたため,おおむね順調に進展しているものと思われる. シミュレータの基礎部分の開発については,進展が遅れている.研究計画二年度目には,救急データのデータ分析をおこない,シミュレータのコア部分の理論構築と実装をおこなう予定であった.しかしながら,社会情勢の急激な変化への対応などの要因により,これらの部分については,進められていない.よって,総合的に考えて,現在までの進捗状況は,やや遅れているという判断に至った.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画三年目は,計画全体の中間期であるので,初年度と二年目の研究成果をまとめて,論文として報告・公表する.特に,施設が閉鎖・削減される場合についての基礎研究部分は,研究計画三年目以降の応用モデルの土台となる部分であるので,今後の研究で参照できるように文書化する. 次に,将来需要と建て替えを考慮した応用モデルを構築する.主に研究計画二年目の成果を踏まえて,将来需要を考慮した再配置モデルについて分析をおこなう.これについては,研究段階であるため,研究計画三年目から四年目までにかけての完成を目指す.完成した場合は,小規模な自治体に適用した数値実験をおこない,口頭発表などを通して議論をおこなう. また,これらの研究・分析段階に派生した関連研究についても,口頭発表と論文作成をおこなう.特に,災害時における救急車の運用についての研究から,避難計画の作成という方向に研究が派生し,研究初年度に分析をおこなった.この結果をまとめて,論文として投稿する. 救急シミュレータの開発については,まず,コア部分の理論の構築をおこなう.この部分は,大まかに先の研究からの継続であるので,順調に進むものと考える.次に,所有している救急データのデータ分析をおこなう.このデータ分析の結果を基にして,大まかにパラメタを設定する.最後に,まずは小規模な段階でのパラメタを設定したシミュレーション実験をおこなう.それらの結果をまとめて,学会報告をおこなうとともに,消防署員とのディスカッションをおこない,具体的な実装に向けた議論をおこなう.全体として,研究計画三年目は,過去二年間のまとめと,今後の研究のための具体的な下地を作る予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画二年目は,特殊な社会情勢下にあり,他業務が研究時間を圧迫して,研究自体の遂行が難しかった.また,旅費を伴う研究発表やディスカッションをおこなうことができず,想定していた旅費を使用することができなかった.年度の後半になり,オンラインでの研究発表会が増えてきたため,それらに参加するようになったが,やはり,旅費については,使用できない状況であった.研究計画三年目は,まだ旅費の仕様は難しいと思われるが,四年目以降,研究成果を国内外にて発表できるように準備する. また,購入予定のコンピュータについては,予定よりもスペックを上げて購入し,より適切な設備環境の上で,研究計画二年目の遅れを取り戻すように努力する.
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