研究課題/領域番号 |
19K04884
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
川向 肇 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 准教授 (30234123)
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研究分担者 |
有馬 昌宏 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 名誉教授 (00151184)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 防災・減災 / オープンデータ / 推計モデルの高度化 / 危機意識 / パーソナル・ナビゲータ / パーソナライズ / 情報提供 |
研究実績の概要 |
2020年度は、洪水災害を中心として、「ひとりひとりに届いて心配性バイアスを惹起する危機対応ナビゲーターの構築」の開発の研究目標の達成に向けて、地域住民ひとりひとりの災害リスクに対する危機意識の醸成と心配性バイアスを惹起するため、地域のリスクの定量的表現に必須となる全国の想定最大規模の洪水浸水深のハザードを利用し、より現実的な被災想定人口の推計を実施した。より具体的には、森林等のオープンデータなども利活用しつつ、4次メッシュベース及び5次メッシュベースでの可住地部分を特定した上での推計により、より現実的な各種の住民属性別の被災人口データベース作成ツールの作成を行った。また、本年度は、その作成ツールの有効性とその検証を行ったうえで、地域ベースで全国の8割以上の地域の浸水エリアに対する被災人口などの属性別推計として、災害弱者と考えられる住民、より具体的には、高齢単身世帯、高齢夫婦のみ世帯、6歳児以下を抱える世帯、外国人、高齢者、後期高齢者、年齢層別被災人口などの推計を大学院生のアルバイトにより実施し、最終的なシステムに反映させるべく、データベース構築を行った。また、これらのデータベース作成の手法と一部の成果について、災害情報学会、地域安全学会、地理情報システム学会、横環連合などで発表を行い、研究成果についての討論を行った。 また、ウェブベースでの地点特定的情報、とりわけ現在地の災害リスク情報を個々人別に提示するシステムの見直しと開発を行い、それについての研究打ち合わせを実施した。 さらに、2020年度に実施する予定であった質問紙調査およびオンライン調査の原型についてのディスカッションを実施し、調査の概要設計と調査の回収率向上に関する具体的方策の検討を行い、調査に関する基本設計を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基本的な最大浸水想定の場合についての洪水について、浸水深別、個人及び世帯属性別データベースの構築についてはある程度は順調に進んでいるものの、データベースの構築には研究代表者が勤務する所属機関が保有する計算機環境の利用が欠かせないが、COVID-19に対する感染症対策として構内滞在時間が通常より短縮されたことに伴い、アルバイトとして作業を依頼している大学院生の作業時間が制約されていることに伴い、研究の進捗状況がやや遅れ気味となっている。「ひとりひとりに届いて心配性バイアスを惹起する危機対応ナビゲーター」へのデータとの連携を図ること、さらに、研究成果の広く社会一般国民への研究成果の還元方法として、推計結果のデータベースの公開を検討した。公開についてのプロトタイプは完成しているものの、全国レベルとなるとデータ量とそれに伴う保管経費が大きく、現在この種の空間的データの保管公開技術を持つ企業体との打ち合わせに着手している。 とりわけ、実際の「ひとりひとりに届いて心配性バイアスを惹起する危機対応ナビゲーター」を地域の防災活動を行うグループ、防災士などの関連団体、また、地域の防災訓練など防災啓発活動で利用してもらい、有用性の評価を受ける予定であったが、近畿圏でのCOVID-19 の罹患者・重症者の急増に伴い、ヒアリング調査や、現実空間でシステムの直接利用を経験した上での質問紙調査などの実施が極めて困難な状況に追い込まれており、試験段階での予備調査を含め、ウェブ調査に切り替えを検討しているところであり、何とか、2021年度内の研究の完了を目指しているところである。 また、利用者の意向や利用者からの反応についての意見聴取手段と機会が限られることから、ナビゲータの改良自体の方針も十分検討できているとは言えない状況にはある。このために、予備調査を含め、ウェブ調査の活用を検討している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに主に実施したデータベース構築作業のうち、わが国の全国土のうち完成部分が約8割程度を占めている部分について完成したことから、本年度は、未完成部分の2割程度の河川災害の被災可能性がある領域に関する推計を7月末を目途に完成させることを計画している。すなわち、全国の大規模河川の最大規模での浸水が発生すると想定した場合について、浸水深別及び住民属性別の被災人口や世帯に関する、より現実的な推計結果に関するデータベースを完成させる予定である。 また、実際の「ひとりひとりに届いて心配性バイアスを惹起する危機対応ナビゲーター」に関する事前調査にあたるウェブ調査などを行い、システム改良に関して、広く一般から意見を聴取し、システム改良の方向性を検討する予定である。 さらに、本研究の最大の目的でもある実際の「ひとりひとりに届いて心配性バイアスを惹起する危機対応ナビゲーター」の有効性の検証を行うために、できるだけ多数の人々が参加可能となるようウェブ調査を実施する予定である。さらに、そのウェブ調査についての調査データを解析することにより、現在開発中の実際の「ひとりひとりに届いて心配性バイアスを惹起する危機対応ナビゲーター」の有効性の検証と、必要となる各種の情報提供、情報提示手段などへのアクセス可能性の拡大などを含め、より具体的な機能改善、機能向上に向けたシステム化の再設計を行うと同時に、改良にも取り組んでいきたいと考えている。 昨年度に引き続き、各種関連学会などでの報告なども行いつつ、開発中のシステムの今後の一層の発展、機能充実の方向性を考えるとともに、今後の研究の一層の発展と精緻化を目指すことを計画している。さらに、可能であれば、他の津波災害等の他の災害への適応可能性も検討とその実現可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
関西圏でのCOVID-19罹患者の急増に伴い、防災関連イベントなどに出向いての展示及び調査が不可能になったこと、また、各種イベント等の開催中止に伴い、開発の際の指針とすべき利用者からの意向を開催イベントなどに参加することで、直接ヒアリングを行う方法などによる直接的な調査が不可能になったこと、さらに、ウェブ調査の打ち合わせが困難になったことに加え、学会などについてもオンライン会議での開催への切り替えなどが行われたこともあり、国内外への出張の機会が大きく制約されており、支出先が限られていることなどによる。 さらに、アルバイトを依頼している大学院生の研究代表者が勤務する大学構内の滞在時間も比較的短期間にしなければならないなど、アルバイトなどの実施についても大きく制約を受け、これらへの支出も大きく制約されているため、当初予想された費用よりも大きく支出が発生しなかったことによる。 2021年度に繰り越しを予定している予算については、2021年度の研究ですべて使用することを予定している。
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