最終年度は、オーダーピッキングの効率を大きく左右するオーダーバッチング問題に取り組んだ。オーダーバッチングは、無人搬送台車を使用しない標準的なオーダーピッキングにおいても重要であるが、無人搬送台車を使用する場合においては、ピッカーがピッキングしたアイテムをより多く、まとめて運ぶことが可能となるため、特に重要な問題となる。 オーダーバッチングの良し悪しを評価するためにはピッカーのルーティングを定める必要があり、両者を同時に最適化することは計算量の観点からかなり難しい問題となる。そこで、本研究では、大規模な組み合わせ最適化問題に対して有効なメタヒューリスティクスに基づく新たな近似解法を構築し、従来法に対する有効性の検証を行った。 補助事業期間全体を通じて実施した研究成果としては次のようにまとめられる。一般に自動化が困難であるとされるピッキング作業を主として担当するオーダーピッカーと、ピッキングされたアイテムを入れた箱の搬送を担当する無人搬送台車を、バランスよく活用する新たなオーダーピッキング方式を提案した。この方式は、人材不足によりオーダーピッカー数に限りがある場合、時期によって需要変動が大きくオーダー数の繁閑差が大きい場合、対象とする倉庫が非常に広くピッキングのための歩行時間の影響が大きい場合など、様々な状況において有効である。 しかしながら、その生産性は次のような影響を受けるため、この方式の活用に際しては注意深い設計が必要である。生産性に影響を及ぼす要因として、ピッカー人数と無人搬送台車数の比率、両者のルーティング戦略と棚配置を含む倉庫形状、ピッカーと無人搬送台車の担当範囲の設定、特にピッキング対象商品に重さ等運搬負荷のバラツキが大きく関与する場合においてはピッカーと無人搬送台車の担当範囲設定等が挙げられる。
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