研究課題/領域番号 |
19K04892
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
木村 光宏 法政大学, 理工学部, 教授 (20263486)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 信頼性 / 依存故障 / コピュラ / Hawkes過程 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つである,接合関数(コピュラ;copula)の理論を基礎とする従属故障の検知に関する技法の開発について,前年度に引き続き数理統計の観点から,実際に得られている依存故障に関するデータセットの分析を行い,新たな知見が得られるべく注力した.具体的には,分析対象としている4連装ベアリングから実際に計測されたオープンデータ(IMS Bearing Dataset;8変量×約4415万行からなる時系列データ)を前年度同様に用いて,FGMコピュラ(Farlie-Gumbel-Morgenstern copula)を分析の道具としてきた.FGMコピュラについては,その数理的な扱いやすさを重視して,年度の後半に掛かるまで用いてきて検討しながら依存性の抽出結果の整理を行い,一部の中間的成果について国内研究集会等で発表した(9月,翌3月).しかしながら,基本的なFGMコピュラには,強い依存性を表現できない欠点があることと,やはり膨大なデータセットを扱う際の計算時間に関するコスト高のため,年度の後半からは一旦基本的なモデルに立ち返ってみることとし,正規コピュラを用いた依存性の抽出について検討を開始した.正規コピュラにおける依存性パラメータの推定には,近似的な方法が知られ,計算時間の削減が期待できると共に,現在分析しているデータセットのサイズが非常に大きいことから,良い近似となることが期待される.8変量からすべての2変量の組合せについて依存性パラメータの推定を行うことから28通りの計算が必要であり,1通りにおよそ13時間かかることが判明しているが,2022年度末から計算結果の取りまとめができつつもあり,これらから最終年度においては,依存故障の予測モデルの開発につなげる見通しを持っている.
また,大相撲力士の休場をHawkes過程に基づく連鎖故障のモデルで分析し,成果を得て公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の一つの目途である,依存故障の統計的な検知について,一般に公開されているベアリングの振動・劣化・連鎖故障に関するデータ(IMS Bearing Dataset)を分析対象として,FGMコピュラを基本とした依存故障の検知に関する検討を行って来ていた.本年度においては,ようやく中間的な成果が得られたため,成果発表を2件ほど行った.その一つについて記しておくと,統計数理研究所における共同研究集会「接合関数(コピュラ)理論の新展開」にて研究発表を行い,示した成果について,コピュラの研究者の方々からいくつか有益な示唆を頂くことができ,今後につながることが期待できる.しかしながら全体的な進捗としては,依存故障の予知・検知に関する数理モデル化まではできていないため,当初の計画からはやや遅れているものと評価する.
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今後の研究の推進方策 |
他の項目で述べた,4連装ベアリングからの振動・劣化・連鎖故障に関するデータ(IMS Bearing Dataset)は8次元×約4415万行の時系列データであるが,それについて,従前は時間軸方向に窓(time window)を設けてデータの縮約を行った上でFGMコピュラに基づく依存性分析を行ってきた.その後,種々の検討・考察により,窓を設けることなく元の情報量のままで分析することに変更することとした.これにより,さらに精緻な依存性パラメータの推定値の時間的推移の観察ができ,依存故障検知のモデル化に寄与するものと期待される.そのこともあり,FGMコピュラとともに,正規コピュラによる依存パラメータの推定を開始しており,今後あらたな知見を得るべく進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画をしていた,海外での研究集会,国際会議に参加するための旅費部分が消費できなかったことにより,次年度使用額が生じている.2023年度においては,主に国内・国外での成果発表旅費として,有効に使用する所存である.
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