研究課題/領域番号 |
19K04902
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
小林 重人 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (20610059)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 協働 / シビックテック / 技術者・非技術者 / ソーシャル・キャピタル / 自律性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,シビックテックコミュニティ(以下,CC)を対象に,技術者と非技術者の協働がもたらす価値と協働に影響する要素を明らかにし,両者の協働がシビックコミュニティ内外で促進するメカニズムを解明することである.本目標を達成するべく,令和2年度では前年度に調査票調査で明らかとなったCCにおける協働が促進されるプロセスモデルについて,経営学を中心とした協働に関する文献サーベイを実施し,我々のモデルの学術的新規性について明らかにした. 検討結果から,CCは企業のような目的活動的組織ではなく,共感する目的や価値の実現,自己実現を求めるといったコミュニケーション組織に相当することがわかった.これらはCCの代表者に対するヒアリングからも組織としての中心性や他律性などを否定し,個人の人格を尊重する傾向にあることがわかっている.その一方で意思決定のための理事会や外部とのフォーマルな関係など,最小限の効率性や目的を達成するための手段を組織として持たなければならないという矛盾も生じている.そのような状況の中で,どのような組織運営を行うことが,組織内外における協働を上手くするめるのか,またその要素はいったい何であるかを明らかにすることは学術的にも意義が大きい。現在,この観点からプロセスモデルの妥当性に関する論文を執筆中である。 協働を促進するための要素を明らかにするため,台湾におけるCC,g0v(ガブゼロ)の事例について文献調査を行った.g0vは多様な職種によって組織が構成されており,そこでは共有の価値を見つけ出して,それぞれがサポートし合うという文化が形成されている.また一人ひとりが良い方法を考え,思いついたら即座に実践してみることが推奨されており,それによって非技術者が活動に関わりやすいような協働のための場づくりや外部組織との関係構築が実現していることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度では,令和元年度で明らかとなった協働に影響を与える要素をCC内外でどのように生み出しているのか,そして生み出された要素がCCメンバーに対してどのように作用しているのかを明らかにするため,国内外のCCのメンバーだけではなく,調査票調査より判明した協働相手となる地域団体の代表,公共セクターに対して半構造化インタビュー調査を実施する予定であった.しかし,新型コロナウイルスの影響によって国内外での移動が制限され,またインタビューにおける感染リスクも大きいことから実施について見合わせることとなった。そのため,台湾などシビックテック先進地における事例とアプリケーションに対する調査を実施することで,予定していた調査について一部代替することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度においても新型コロナウイルスの影響が大きく,引き続き国内外の移動が制限されていることから,CCへの現地調査は困難であると思われる。そのため,事例については可能な限りオンラインや文献を通じた調査に切り替えることで実現していきたい.また,現時点までに明らかにすることができているプロセスモデルと令和2年度までに実施した文献調査を統合して,遅れているシミュレーションモデルの構築を引き続き実施していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は次の2点である.新型コロナウイルス発生の影響により,対面での調査が実施できなくなったために調査旅費が発生しなかったことと国際会議での成果発表にかかる旅費が発生しなかったことである. 次年度は当初の予定通りシミュレーションの実施をするために計算機の購入を行う.また現時点までの成果をジャーナルに投稿すべく,投稿料及び論文校正料に予算を投じる.前年度に実施できなかったシミュレーションモデルの精緻化を進めるために,共同研究者である北陸先端科学技術大学院大学の橋本敬教授に複数回の助言をいただくことを予定する.そのための打ち合わせ旅費も使用計画に計上する.
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