研究課題/領域番号 |
19K04904
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
中出 康一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50207825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 最適政策 / 近似政策 / 発注政策 |
研究実績の概要 |
マルコフ決定過程の近似アルゴリズム,最適政策のもつ性質の理論的導出に関する近年の論文を読み,多くの近似アルゴリズムが存在することがわかった.ごく最近平均費用最適化に関する優れたアルゴリズムの論文が見つかったため,今後適用を含めて検討する.最適政策が持つ性質を理論的に導出する論文がいくつかあるが,用いる性質がいくつかあり,まだ理論的な共通項等は理解し切れていない. いくつかの問題についてアルゴリズムを適用した.待ち行列における客の窓口へのサービス割当て問題では,待ち行列の長さと先頭の待ち行列から窓口までの歩行時間を考慮しながら,窓口の稼働数と待ち時間に関する費用を最小にするように適切に待っている客を割り当てる必要がある.この問題では,現在の期と次の期の2期分の総期待値を最小にする決定をとることが,最適に近いことがわかった. また,コンビニ等において複数回納入・廃棄が行われているシステムにおいて,最適な発注政策を求める問題をマルコフ決定過程により定式化し,その最適政策あるいは近似最適政策がもつ性質を数値計算をして考察した.商品棚には少し前に納入されたものと新しく納入されたものが並んでおり,古いものから順に廃棄される.売り上げ,廃棄や在庫費用を考えて発注をおこなう.数値実験から,仮に連続する時間間隔での需要が同一だとしても,納入される製品の数を変えた方が,利益をより高くすることがわかった.この導出について,線形計画法を用いた近似政策の導出方法を用いている. これ以外に,生産が不安定である2段階生産システムにおいて,発注者は生産が不安定であることを考慮して自己の利益を最大にするように発注し,生産者はそれを見越して生産する問題を考え,発注者の最適発注政策をマルコフ決定過程により定式化している.また,需要情報の情報量が最適化に及ぼす影響についても議論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最適政策の理論的背景についてはまだ理解を深めている段階で新しい体系を見いだしているとまでは言えない.一方,様々な動的最適化問題において,マルコフ決定過程で近似最適政策を求めており,その点では順調である.2期分の費用を求めて最適な決定を下す方法は有用である.また,線形計画法の最適化は以前から知られているが,依然と比べ大規模な問題を解くことは可能であり,このことと状態・決定の対象を絞ることと合わせることで,より大きな問題も解くことが可能となることがわかったことは,今後の近似アルゴリズムの研究の足がかりになると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
最適政策の理論的導出については,今後さらなる研究を進める. 具体的には最適政策の理論的導出に関する論文を精査し,その背景にある理論を導くことを念頭におく. また,文献や昨年度の研究成果をもとに近似アルゴリズムを提案しいくつかのモデルに当てはめて,近似アルゴリズムの有効性とその適用の適切さについて考える.今年度は風力発電の最適補修政策への適用を考えて行く.このことやこれまでの成果をふまえて,近似アルゴリズムとモデルとの相性についても考察していく.
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