研究課題/領域番号 |
19K04904
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
中出 康一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50207825)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | マルコフ決定過程 / 最適政策 / 近似政策 / 風力発電 / 在庫管理 |
研究実績の概要 |
マルコフ決定過程の応用として,洋上風力発電所おける最適な保全計画政策を求めた.洋上発電では,修理・部品交換のために施設に向かおうとしても,天候等の理由により修理に向かえないことがあり,その確率は季節によって異なる.また,季節により停電による損失費用も季節により異なる.本研究では,このことを考慮して20年間における最適な保全政策を求めた.保全には,維持(何もしない),事前修理,事前大規模修理,事後修理,事後交換がある.修理を考慮した経過年齢を状態としてマルコフ決定過程として定式化し,各期における最適な保全政策を求めた.さらに,周期的に行う保全政策との比較をおこなった. また,生産者と販売者が存在する2段サプライチェインにおいて,生産者の最適生産政策と販売者の最適な発注政策を求めた.生産者は,販売者の発注を受けて,作りすぎ,不良品発生,輸送,環境負荷費用と生産利益を考慮して最適な生産量を作る.販売者は,生産者がこの生産政策をとることを知った上で,在庫量や需要分布をもとに最適な発注政策を求める.販売者の問題をマルコフ決定過程として定式化し,最適な発注方策を数値計算により求めた. 昨年度のコンビニにおいて新旧製品が存在する製品の近似最適発注政策を求める問題について学術論文として発表した.マルコフ決定過程に関連して,確率モデルアプローチにより,待ち行列の状態により到着率が変化する待ち行列システムの最適到着・サービス制御問題,待ち時間情報により客の到着率が変化する生産在庫システムにおける最適生産問題について 定式化を行い最適な制御方法について考察した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応用面では,生産在庫システム,販売者の発注に加え,風力発電の保全政策等新たな応用や発見が見られた.マルコフ決定過程以外の確率アプローチでも情報を用いて客の到着制御や生産制御に関する研究を行うことができた.後者はマルコフ決定過程を用いてより動的な問題を扱うことができると期待できる.一方で,理論的な最適政策の性質については数値計算等による議論は行っている一方,理論のみによる最適政策の性質については思うように進んでいない側面がある.
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度の概要に述べた情報を用いることによる最適政策への影響について,マルコフ決定過程のアプローチ,あるいは強化学習や近似最適政策のアプローチを用いて検討する.このモデルに限らず,情報の多寡や正確さが最適政策にもたらす影響を調べる.また,理論的,あるいは数値計算を通して,最適政策が持つ性質,また近似政策を求める新しい方法について検討していく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度参加予定であった国際会議がCOVID-19の影響により複数中止になり,計算機等の購入に一部あてたものの予定通り使用することはできなかった.来年度はオンライン等も含め国内外の会議に出席予定である.
|