研究課題/領域番号 |
19K04912
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
浦谷 規 法政大学, その他部局等, 名誉教授 (80126268)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 年金基金のリスク管理 / 社会福祉支出増加 / リスク管理 / コロナ禍の財政赤字 / テールリスク管理 / キャットボンド / オプション価格理論の応用 |
研究実績の概要 |
年金基金のリスクは2020年3月から始まったCOVID-19によって大きく変動した。超過死亡率は米国やEU諸国において増加したのに比べ、日本では逆に減少した。さらに長期化するステイホーム行動により高齢者はそのフレイルの増加とさらなる長寿リスクが拡大した。経済的には、コロナ対策費が既にGDPの2.5倍もある我が国の財政債務を更に拡大しつつある。コロナ禍の影響によって急拡大した社会福祉支出のマクロ経済への影響が、制御の困難なインフレーションを誘発する可能性は否定できない。さらに、今後30年以内に確率70%で20メートル超の津波を伴う南海トラフ地震が心配される。予測不可能であったコロナ禍への対策費で危機的水準になった財政にはさらなる大震災への財政支援の余裕はない。 そこで災害対策のための財政資金の調達にキャットボンド(Catastrophe Bond)を用いて余剰資金の溢れる資本市場から調達する理論的可能性を検討した。理論は債券購入者のペイオフをプット・オプションで表し、保険サイドはコール・オプションによって計算した。単純なシミュレーションからこのモデルの発展可能性が得られた。 その成果は、2021年3月19日から23日まで早稲田大学理工キャンパスで実施されたWaseda Cherry Blossom Workshop on Topological Data Scienceにおいて、"Pandemic, Insurance and Extreme Value Theory"として研究発表を行った。さらに、論文としては日本オペレーションズリサーチ学会・インフラのOR的展望研究部会の最終研究報告書に「コロナ禍の財政赤字とキャットボンド」を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で人口動態、財政状態が大きく変動する可能性があり、長期計画のある年金基金の基礎的前提を再検討する必要に迫られたため。数理モデルの前提となる基礎データの検討に多くの時間を取られている。
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今後の研究の推進方策 |
長寿デリバティブは民間企業の年金のリスク管理に用いられて発展してきたが、公的年金のリスク管理に資本市場のアイデアと資金を取り込み、頑健性を付加出来るかどうかを理論的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で予定していた国内および国外の学会および研究集会が中止或いは延期になり研究発表および意見交換の場を失ったため。2021年度に開催される会議において、コロナで大きく影響を受けた年金財政とその対策としての保険デリバティブに関する研究成果を発表する。
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