研究課題/領域番号 |
19K04913
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
椎名 孝之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90371666)
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研究分担者 |
今泉 淳 東洋大学, 経営学部, 教授 (00257221)
所 健一 一般財団法人電力中央研究所, エネルギーイノベーション創発センター, 上席研究員 (50371662)
徐 春暉 千葉工業大学, 社会システム科学部, 教授 (70279058)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 確率計画法 / 最適化 / 多期間計画 / スケジューリング / 不確実性 |
研究実績の概要 |
確率計画法の応用として、エネルギーシステムの運用計画を考えた。太陽光、蓄電池、蓄熱層等を含むエネルギーシステム(コジェネレーション+系統電力)に太陽光の不確実性を確率的変動として導入した場合の、運用最適化を考える。この問題には確率計画法により最適化を行うことで、蓄電池や蓄熱槽の現実的な運用を可能とした。そして、不確実状況下での電源運用最適化モデルの開発を行った。需要、卸電力市場価格、再エネ電源発電量、のそれぞれの不確実性を確率的変動として導入した場合の、電源運用最適化モデルを開発した。不確実性を表すモデルにおいては、個別シナリオを条件として最適化しても、シナリオ毎に得られる運用方法に整合性が得られないことがありうる。確定的な計画要因を明らかにしたうえで、変動する条件に従って運用を最適化しなければならない。このような運用のコストを最適化することを可能とした。 また、プロジェクトに含まれる作業時間と費用のトレードオフを考慮したスケジューリング問題TCTP(Time Cost Tradeoff Problem)では、納期を重要視するモデルや、費用を重視するモデルが提案されているが、工数と資源の投入を考慮したモデルは少ない。工数=作業時間×資源投入量と仮定すると、作業時間は資源投入量の非線形関数となるため、取り扱いが難しい問題となるためである。しかも資源投入量は離散値に限定されるため、確率変動を考慮した整数計画問題を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エネルギープラントの運用モデルは、蒸気吸収式冷凍機の入出力量の関係を表す非凸非線形制約式を含むため、一般的なソルバーでは直接的に解くことはできない。モデルを混合整数計画問題として扱うために、図2のように区分線形近似により線形化する。区分線形近似で追加した決定変数により、決定変数の数は格子点数に応じてさらに増加するため、非常に大規模な混合整数計画問題となる。エネルギーシステム運用計画問題の定式化と、効率的な数値解法を開発することができた。 また、時間と費用のトレードオフとなる関係に着目したプロジェクトスケジューリング問題を取り扱った。ある作業に対して投入する資源数を増やすことで作業の所要時間は短くなり、プロジェクトも早く終わるがその分だけ費用が増加してしまう。本研究では、プロジェクトの各作業に対して工数を基に適切な資源投入数の決定を行うような最適化モデルを作成し、作業時間の不確実性を考慮に加えた確率計画モデルへの拡張を行った。これによりプロジェクトにおける時間と費用の関係を制御することで、適切な意思決定が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、電力供給に関しては、1 日前市場の電力価格を基に翌日の30 分毎の発電計画と需要予測を確定されるように計画が行われている。しかし、発電所が故障や点検により停止して計画していた量が発電できない場合や、天候の変化により発電量が増える場合は、当日市場において不足分もしくは超過分を売買することができる。その際購入費用が大きく上昇してしまう場合があり、非常に大きな損失が生じてしまうおそれがある。本研究では、このようなリスクを回避するための数理計画モデルを開発する。変動する費用に対するリスク指標として用いられるものにVaR(Value at Risk) がある。CVaRとはVaRを超える最悪費用の期待値である。この問題は前述の手法で効率的に最適解を求めることが可能である。従来の期待値最小化モデル(青線)に比べてCVaR最小化モデルでは上側で発生する最悪の費用を抑える結果が得られ、費用のばらつきが小さくなるということを示すことができる。期待値最小化モデルと比べてCVaR最小化モデルでは費用の期待値は少々増加するが、最悪のシナリオで発生する大きな費用を回避することが可能となる。 スケジューリング問題に対しては、モーメントマッチング法(moment matching method)を用いてシナリオ数の削減を図る。シナリオがツリー型で与えられている場合において、元の確率分布の期待値や分散、歪度、尖度等の統計的性質を保つように、各段階毎のシナリオの確率を与えなおす手法である。各段階のシナリオに相当するノードの確率が0になる場合があるため、 シナリオ数の削減を行うことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた複数の会議が中止となったため、次年度以降参加のために使用する予定。
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