研究課題/領域番号 |
19K04916
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
高濱 節子 広島修道大学, 商学部, 教授 (60186989)
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研究分担者 |
海生 直人 広島修道大学, 経済科学部, 教授 (80148741) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非線形最適化問題 / 多峰性最適化問題 / 差分進化 / 粒子群最適化 / 近接グラフ / 集団的最適化手法 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は,集団的最適化手法(POA)において,効率的に最適化を行うことが困難な多峰性問題,高次元問題,厳しい制約条件を持つ制約付き最適化問題を効率的に解くPOAを開発することである.本年度の主な研究成果は以下の通りである. ①DEの探索性能向上に関する検討:先行研究においては,粒子群最適化(PSO)の探索性能を向上するために,解集団の重心と最良解の間の正規化距離DCBを提案し,その値によって集団の探索状態を収束/移動と推定し,状態に応じて収束/移動を強化するように探索モードを変更する方法を提案した.また,適応型DE(JADE)の探索性能を向上するために,極端な個体のパラメータを制御する方法を提案した.2023年度は,これらの2つの方法を統合することを提案した.前者はJADEで使用するために,後者は2つの方法間の干渉による探索効率低下を回避するために修正した。提案手法によるJADEの有効性を,13のベンチマーク問題によって示した。 ②多峰性最適化問題(MOP)に対する最適化手法の検討:先行研究では,β緩和相対近傍グラフ(βRNG)を用いた種分化を基礎とするPSOは、多数の最適解を高精度に探索できることを示した。2023年度は,βRNGを用いた種分化を基礎とするPSOに交叉演算を導入し,最適解が多数存在し解が規則的に分布する関数の探索精度を向上させることを提案した。山谷判定によって得られた良好解は、交叉効率を強化するために交叉操作で用い,交叉操作による他の関数の検索効率の損失を回避するために交叉率を適応的に調整する方法を提案した。提案手法の性能は、「CEC'2013 特別セッションおよび多峰性関数最適化のためのニッチング手法に関するコンペティション」のよく知られたベンチマーク問題を最適化することで示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①多峰性最適化問題(MOP)への対応:多峰性最適化問題(MOP)に対して,近接グラフによる概形の推定に基づく最適化アルゴリズムについて研究を行ってきた.近接グラフとして,当初はガブリエルグラフ(GG)と相対近傍グラフ(RNG)を用いたが,2022年度はGGとRNGの中間的性質を持つβ緩和相対近傍グラフ(βRNG)を近接グラフに基づく種分化型粒子群最適化(PSO)に導入し,有効性を示した.2023年度は,βRNGを用いたグラフを用いた種分化によるPSOに交叉演算を導入し、最適解が多数存在し解が規則的に分布する関数の探索精度を向上できることをベンチマーク問題を用いて検証した. ②集団の探索状態の推定に基づいたPOAのアルゴリズムパラメータ制御による探索性能向上に関する研究:先行研究において,PSOに対して集団の探索状態が収束に進んでいるか,移動しているかを推定する方法を提案している.さらに,適応型DE(JADE)に対して極端な個体を利用したパラメータ制御方法を提案している.2023年度は,これらの提案手法を適応型DE(JADE)に対して適応するための修正方法および両方法の干渉による探索効率の低下を防ぐための調整方法を提案し,ベンチマーク問題を用いて提案手法の有効性を検証した.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,2023年度に引き続き,以下のように研究を進める予定である. ①集団の探索状態・進化状態の推定:最良解が集団の中心に近ければ,最適解が重心に近いと想定され,集団が収束状態にあると推定される.これに対して,最良解が重心からく離れていると,最適解は重心から離れていると想定され,集団は最適解に向かう移動状態にあると推定される.集団の状態を推定し集団に含まれる特徴的な解を用いることで,アルゴリズムパラメータの適応制御を実現し探索性能の向上を図ることについて引き続き検討する. ②多峰性最適化問題(MOP)に対する最適化手法の検討:MOPは複数の最適解を有する問題においてすべての最適解を一度に探索する非常に困難な最適化である.MOPに対する探索精度を向上するためには,集団の多様性の確保と探索性能の向上が必要である.集団を複数の部分集団に分割する種分化と近接グラフに基づいた山谷判定による解周辺の関数形状の推定を用いることによってこれらの課題を克服できると考え研究を行ってきており,次年度も引き続きこれらの検討を続ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は,所属機関である広島修道大学が新型コロナウィルス流行以前の状態に戻った.しかしながら,学会,研究会などは引き続きハイブリッド開催のものがあり,今のところオンラインで参加することが多くなっている.特に,海外で開催される国際学会については参加を控える結果となっている.そのため,本研究課題の申請時に予定した旅費の執行が計画通り進まなかったことが,次年度使用額が生じた最大の理由である. 2024年度は,2023年度に行った研究を継続して行う.それらの研究成果を積極的に学会・研究会で発表するとともに,論文投稿してゆく予定である.
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