研究課題/領域番号 |
19K04917
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研究機関 | 保健医療経営大学 |
研究代表者 |
辻 正二 保健医療経営大学, 保健医療経営学部, 教授(移行) (10123936)
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研究分担者 |
徳野 貞雄 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 名誉教授 (40197877)
泉 賢祐 保健医療経営大学, 保健医療経営学部, 教授(移行) (20516976)
内田 和実 保健医療経営大学, 保健医療経営学部, 教授(移行) (30232846)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会的時間 / 災害 / 回復過程 / コミュニティ / グリーフ・ケア / 出来事 / 大きな変化 |
研究実績の概要 |
本研究は、「大規模災害における時間喪失とその回復過程に関する時間学的研究」という研究課題名で、地域社会の人々が大規模災害を体験することによって生ずる時間喪失とその後の回復促進のメカニズムを解明して、「安心・安全社会」の実現のための一助となる知見を見いだすことを目的としている。 この1年間の作業は、代表者の辻と研究分担者の3名(徳野貞雄氏、泉賢祐氏、内田和美氏)とが研究企画と実施に当たって必要な情報や研究成果の整理を行い、次年度実施の調査研究の分析視覚を具体化するためのものであった。そのなかで、代表者の辻が時間学の視点で、「時間が止まった」という現象の解明を目指ために必要な視点を指摘し、分担者とともに研究会を開催した。熊本大名誉教授の徳野氏は、熊本震災の被災体験の経験者で、長年震災復旧に強い関心を持っており、彼に加勢を仰いだ。保健医療経営大の泉氏と内田の参画は、それぞれ泉氏が社会福祉学の観点で、内田氏が経済地理学の立場からの参画をしてもらった。 初年度の目標は、本研究の課題に迫るために、どのような調査の視点が必要かを検討した。 徳野氏は、熊本震災発生時に学生アンケート調査(記述データのみ)をしており、その分析を内田と辻の両名で試みた。その他、徳野氏からは、西原村のアンケート調査のデータ(実施済み)を見せてもらい、その分析にも試みた。その他、熊本震災後に出版された報告書や書物を収集して、熊本震災の課題等を把握することに努めた。 以上から、調査の候補地として一番被害の大きかった益城町と山間地の西原村を選んだ。次年度は、この二地域において本研究課題「大規模災害における時間喪失とその回復過程に関する時間学的研究」に必要な調査を行いたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題に対して昨年度取り組んだのは、以下のことである。 研究代表者である辻の本研究へのアプローチの方法の提示、今後の研究のための分析枠組みの作成、資料の収集、公式統計の収集などを行った。そして、そのために辻および研究分担者の徳野、泉、内田の4名でもって、各分担研究箇所の研究のために必要な作業、今後必要となる作業などを確認し、課題の摘出を行った。研究会は、4名の都合のつく時間帯に開催を計し、実施した。この研究会は、保健医療経営大学において月1回の割合で開催した。 本研究では、代表者の辻が特に全体の総括を担当するが、なかでも「出来事」の研究、「動き」、「意味づけ」などの考察を担当する。次いで、熊本県の調査のベテランである徳野は地域社会学を専攻することから、島原の火砕流被害の頃から災害に関心を持っており、2年前の熊本地震以後、熊本で災害避難者の研究をしている。①と②の「家族の喪失」を集落点検で解き明かす。保健医療経営大で福祉の専門家である泉は「グリーフ」と「グリーフ・ケア」に関心があり、④と⑥の箇所を担当し、⑤の「同期化」の変化の流れについて検討する。そして、経済地理学の研究者である内田は、時間喪失者とグリーンツーリズム(観光=光を観る)視点から癒しの効果などを探る。そのことにより⑥の「回復過程」でを担当する。本研究課題に対する4名の担当領域は、明確になっており、20年度の研究において実施予定のアンケート調査の項目を提出してもらい、熊本県内の二地点で調査を実施する予定である。なお、2020年になり、コロナウイルスの感染症の問題が深刻化しており、いまのところ聞き取り町に基づいて、本研究課題の聞き取り調査が、極めて困難な状況にある。3密等の問題で、安易な形での聞き取り調査は困難な状況にある。調査実施企画の変更も余儀なくされるかも知れないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
19年度は、初年度においては本研究の課題遂行のために、大規模災害がどのような影響を与えてきたのかをこれまでの研究を整理して、本研究のための研究枠組みを確立する。大地震により、被災者個人が極限状態に陥った時に精神的なショックの大きさから茫然自失となった状態を「時が止まった」と考える、そして、その状態から脱して生きていく希望を見いだしていく回復プロセスに着目していく。時が止まった」という状態を、具体的にはどういう現象か、どういう状態をもって「止まった」と定義するのか、設定方法を明確にしておかないと、調査段階でどうやって抽出するのかという問題に直面する。20年度は、調査の実施を行う。調査地の選定を行う。益城町と西原村で行うことにした。21年度は、調査結果の分析から調査結果の報告書の作成を行う。辻は特に全体の総括を担当するが、なかでも「出来事」の側面、「動き」の側面、「意味づけ」の側面を中心に考察を担当する。徳野は地域社会学を専攻することから、2年前の熊本地震以後、熊本で災害避難者の研究をしており、「家族の喪失」を集落点検で解き明かす。泉は「グリーフ」と「グリーフ・ケア」に関心があり、④と⑥の箇所を担当し、⑤の「同期化」の変化の流れについて検討する。内田は、時間喪失者とグリーンツーリズム(観光=光を観る)視点から癒しの効果などを探る。そのことにより⑥の「回復過程」を担当する。 2020年4月以降、新型コロナの影響で、実地調査ができないでいる。いまのところ、自前で調査を実施する予定であるが、その場合、感染症の推移をみて、調査の方法を決定したいと考えている。11月までに調査実施が不可能な場合は、調査を専門とする調査機関に依頼したいと考えている。それが不可能なときは、調査時期の延長申請か、別の研究方法の方策を行いたいと考えているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、支出面ではアンケート調査で実施する。調査対象者総数は500名を予定しており、この実施のために調査票の印刷費、アンケートの郵送料、さらに返送されてきた調査票のデータ入力に関して、調査データの補助のために雇用の必要がある。そのことを考えて、前年度の経費を節約して、次年度の経費の増額に回した。 現在のところ、自前で調査のデーター収集を計画しているが、コロナウイルス感染症で、現地の聞き取り調査などの企画の実施は、不可能かも知れず、その時には調査の一部を調査機関に依頼する可能性もあるかも知れないと考えている。
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