研究課題/領域番号 |
19K04919
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
本島 邦行 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30272256)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属管欠陥探査 / 電磁波伝搬 / 電磁波位相特性 / 群速度遅延 / 遠隔計測 / 非接触計測 / 熱交換器 |
研究実績の概要 |
本研究テーマは、金属管を電磁波伝搬用の”円形導波管”に見立て、その内部に電磁波を放射して管内を伝搬させ、その伝送特性から金属管内の様子(き裂・異物・変形の存在)を容易に検出する独自の計測法である。 今年度は、昨年度に引き続き金属配管の湾曲部を最大8箇所まで増やして計測をおこなった。その結果、本計測手法でおこなっている群遅延特性を用いた計測法が有効であることを再確認した。湾曲部が多くなるほど電磁波の金属管内伝搬損失が増加するが、本計測手法の特長である群遅延特性計測には影響を与えないことが明らかとなった。この研究成果は、2020年度第11回電気学会栃木・群馬支所合同研究発表会にて発表報告した。 また今年度は、金属管内電磁波放射用プローブの開発をおこなうことを予定していた。しかし、電磁波放射用プローブを試作した結果、広帯域周波数において高精度な位相特性を持つ電磁波放射用プローブの開発は、技術的に相当難しいことが明らかとなった。一方、同軸導波管変換器→矩形円形変換器の組み合わせた計測方法の方が、電磁波放射用プローブより高精度な位相計測が可能であり、また実験結果の再現性が高いことが明らかとなった。よって、電磁波放射用プローブの代わりに同軸導波管変換器・矩形円形変換器の組み合わせを用いて本研究テーマを遂行することにした。 次年度に向けて、き裂部や変形部を有する金属管の実験環境構築の検討を開始した。さらに、本研究テーマ申請書には実施予定内容として記載していなかったが、本研究テーマで提案の計測手法が分岐部を持つ金属配管を対象とした欠陥検出にも適用可能であるかについても検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究テーマの申請書では、1.金属管内電磁波放射用プローブの開発、2.多数の湾曲部を有する金属管内電磁波伝搬特性の解明、3.金属管内の欠陥(異物の存在、管の変形、き裂)検出と計測感度の向上、を計画していた。しかし、昨年度の研究実施の都合により、2の多数の湾曲部を有する金属管の計測実験を先におこなった。 一方、最初におこなう予定であった1の金属管内電磁波放射用プローブの開発は、本研究テーマの目的である群遅延特性計測をおこなうのに十分な性能を持つ電磁波放射用プローブを開発することが困難であることが判明した。その主な原因は、電磁波放射用プローブと金属管との接合部の電気的な問題により、良好な広帯域・高周波特性を得る構造が作成できなかったためである。そのため、同軸導波管変換器・矩形円形変換器の組み合わせた計測方法で研究を遂行することにした。この組み合わせによる計測方法では、金属管の直径に合わせた矩形円形変換器を作製する必要があるが、これらを用いることで広帯域周波数において安定した計測が可能であり、また位相特性も良好であることが明らかとなった。そこで以降の計測実験は、この組み合わせを用いておこなうことにした。 また、次年度の主な計測テーマである、き裂部や変形部等の欠陥を有する金属配管の欠陥検出実験の準備を始めた。 さらに、本研究テーマの申請書には記載していなかったが、分岐部を有する金属配管を対象とした計測においても、本研究テーマの計測方法が適用可能であるのかを評価するため、次年度の実験方法の検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように、本研究テーマの申請書記載の研究実施順とは異なった順番で研究を実施している。また、広帯域及び高性能な金属管内電磁波放射用プローブの開発を断念し、その代わりに同軸導波管変換器・矩形円形変換器の組み合わせによる計測方法で研究を遂行することにしたが、次年度もこの組み合わせによる計測方法を用いて研究を進める予定である。 次年度からは、き裂部や変形部を有する金属配管の欠陥検出について計測実験をおこなう予定である。そのためには金属管の加工も必要となるため、金属管の加工方法を検討し、金属管加工用工具の手配もあわせておこなう予定である。これらを用いて、き裂部や変形部の大きさと欠陥検出精度の関係を明らかにする。特に変形部検出に関しては、金属管そのものによる変形と異物などの存在による変形を分けて計測実験をおこない、各々を対象とした最適な計測方法と計測限界を明らかにする予定である。 さらに、本研究テーマの申請書には記載していなかったが、分岐部を持つ金属配管を対象とした欠陥検出も研究テーマとして実施する予定である。そのために分岐部を持つ金属配管を特注して計測実験をおこなう予定である。分岐部が増えることによって同軸導波管変換器・矩形円形変換器の組み合わせが多数必要となるため、これらの追加手配もおこなう。 そして次年度は本研究テーマの最終年度であるため、全体の取りまとめと研究結果が不十分な点があれば追加実験等を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究結果から、広帯域及び高性能な金属管内電磁波放射用プローブの開発を断念したため、電磁波放射用プローブの部品・作製費用を使用する必要があまり無かった。そのため今年度までの予算執行額が少なく、結果として「次年度使用額」が大きくなった。 一方、次年度の研究遂行には、電磁波放射用プローブの代わりに採用した同軸導波管変換器・矩形円形変換器の組み合わせを多数購入する必要があるため、今年度未執行であった予算を用いてそれらを購入して研究を遂行する予定である。特に、同軸導波管変換器は市販品があるが、矩形円形変換器は被計測対象である金属管の大きさに合わせて、大きさ・構造を指定して特注で作製してもらう必要があるため多額の費用が必要となり、今まで未使用であった残予算をそれらの購入に使用する予定である。 さらに、本研究テーマの申請書には記載していなかった分岐部を持つ金属配管を対象とした欠陥検出もおこなう予定であるが、分岐金属管の分岐の数だけ同軸導波管変換器・矩形円形変換器の組み合わせが必要となるため、それらの追加購入のための費用として使用する予定である。
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