本研究テーマは、金属管を電磁波伝搬用の”円形導波管”に見立て、その内部に電磁波を放射して管内を伝搬させ、その伝送特性から容易に金属管内の欠陥検出を可能とする独自の計測法である。 最終年度である2021年度は、き裂や変形が生じた金属配管の欠陥検出について計測実験をおこなった。劣化した金属配管を想定し、被計測対象の金属管にき裂を設け、その方向や位置によって本研究テーマで提案している計測方法でどのような計測結果が得られるかを評価した。その結果、金属管に生じたき裂の方向(金属管長手方向、断面方向)によって検出精度に大きな違いがあることが判明した。これは、金属管内を伝搬する電磁波伝搬モードによって金属管内面に励起される高周波電流の向きとき裂の向きのなす角が計測感度に影響し、特に高周波電流の流れを遮断する方向のき裂がある場合に、最も伝搬特性に影響することが明らかになった。 そして3年間実施した本研究テーマの成果は、主に以下の3点である。 1.湾曲部を多数有する金属配管の異常検出法として、管内を伝搬する電磁波伝送特性を用いた計測方法が有効であること、2.金属管内の伝搬損失の影響を受けにくい計測方法として電磁波伝搬位相特性(群遅延特性)を用いることが有効であり、これにより高精度な計測が可能となること、3.金属管に生じたき裂などの検出も本計測法で可能であり、金属管内の高周波電流の向きとき裂の向きのなす角が計測精度に大きく影響を与えていること、などである。 以上の結果から、金属配管の異常検出法として管内を伝搬する電磁波を用いることが有効であることを実験により立証できた。この成果により、金属配管の欠陥検出において電磁波を用いた新たな計測分野を切り開くことができた。
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