研究課題/領域番号 |
19K04922
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
瀬尾 明彦 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (80206606)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人間工学 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までの成果をもとに、デジタルヒューマンモデル(以下、DHM)によるシミュレーションで動作のばらつきをを入れて反復動作での負担推定を可能にするシステムの拡張を行った。 昨年までの研究で、動作の際の左右の力のかかり方に経時的な変動があらわれることが確認できた。また、持ち上げ動作の際の往路と復路において、上肢・腰部・下肢のそれぞれの部位への重みのかけ方により、異なる動作経路が生成され、かつそれによって反復作業時間も20%程度の増減が生じることが確認された。 昨年までの研究で、所定の動作で一定の異なる経路で負担度の相違をシミュレーションで比較することが可能であった。本年度は、任意の作業において、ランダムにばらつきが混入する条件でのシミュレーションが可能なように、DHMのシステムを拡張した。具体的には、人や荷物の配置、力の大きさ、移動方向などをランダムに生成できるようにスクリプト機能の拡張と処理の高速化を行った。その結果、最大15000秒(4時間)までのランダムな荷物取り扱い作業のシミュレーションが可能になった。また、従来の反復作業の負担評価手法の文献を改めて整理し、力の大きさと頻度に加えて反復作業時間中の活動時間の比率(デューティ比)も評価のための作業要因として扱うことにした。 以上を踏まえて、作業の保持時間や手位置などを変えた荷物取り扱い作業のシミュレーションを行い、反復作業時間との関係を調べた。その結果、たとえば持ち上げ距離が長いことよりも、始点と終点の位置のばらつきのほうが反復可能時間が短縮しやすいこと、デューティ比については、これが高いと単純に反復可能時間は減少するが、ランダムな手位置変化を与えないと反復作業時間がむしろ延長してしまうことなどを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、多様な作業姿勢での評価実験をシミュレーションで検討して選別し、実験に進める予定だった。予備的な作業実験はいくらか行ったものの、ばらつき評価に適した実験条件を決定しきれなかった。そのため、実験条件をより自由にシミュレーションで検討できる環境の構築を優先した。これによって検討できる範囲が広がり、かつ本年度の研究で作業条件のポイントもいくつか絞り込むことができたので、次年度にはこの遅れは回復できると想定している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は手位置、持ち上げ距離、デューティ比について、反復作業における連続作業時間に与える影響をシミュレーションで明らかにした。操作力についても、左右の力の配分や力の方向に同様なばらつきを与えることで、より現実的な作業条件の評価が可能なことを確認する予定である。これらの点については、実験によってもその変動の影響の定量化を試み、評価の重みパラメータの決定を行う。 また、長時間のシミュレーションが可能になったので、既存の長時間の反復作業の負担評価法との一貫性についてもさらに検討を行う。長時間になるほど実験的に妥当性を確認するのは極めて難しくなり、シミュレーションのみでの比較することになる。従来法も複数の実績ある手法があり、これとの一致性を確認することは妥当性の検証法の一つとして最近多く行われているので、本研究でもそれに従うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献資料の発行時期との関係で購入を先送りしたことによる持ち越しである。新年度早々に執行する予定である。
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