研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までの成果をもとに、反復作業での動作のばらつきのデジタルニューマンによるシミュレーションに必要な、動作のばらつきを実測する実験を実施した。 昨年度までの持ち上げ作業のシミュレーションで、反復作業時間に手位置の変動が与える影響が大きいことが明らかになった。そこで本年度の研究では、手位置が変動する作業条件での実測実験を行い、その影響を検討した。実験条件としては、荷物質量を1, 7.5, 15 kgの3条件、荷物高さは2条件とし、同じ質量の荷物4個を設置方位が90度に直交するようにレイアウトされた高さの異なる作業台の間を移動しながら、荷物の運搬を行う作業とした。荷物の取り置きの順番は指定したが、立ち位置と作業姿勢は任意とし、一般的な荷物運搬で発生するランダムな立ち位置が生じるようにした。同じ荷物質量、高さの条件ごとにのべ200回の荷物の持ち上げと下ろしを測定し、そのデータの分布の傾向を検討した。作業姿勢と作業位置はモーションキャプチャシステムで測定した。分布は、両足中心を原点として手位置も左右の中点の床平面上での原点からの変位により検討することとした。データ分布はカーネル密度推定によるコンター図の作成と、前後左右方向の変位の平均値と標準偏差による数値化を行った。その結果、手位置は荷物が重いほど体に近づける傾向はみられたものの、そのばらつきは標準偏差で10~15 cm程度であり、荷物質量の影響は見られなかった。また、荷物位置が高い場合と低い場合においても、手位置が高いほうが前後方向よりも左右方向のばらつきがやや大きい傾向がみられた。 今回得られた手位置のばらつきは、昨年度のシミュレーションで仮に使用したばらつきと同程度であり、この値を利用することでばらつきを考慮した反復作業評価が可能なことが確認できた。
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