研究実績の概要 |
本研究では,閉鎖空間における火災現象と浮力の効果の小さい低重力環境における燃え拡がりには一定の関係性があるものと考え,低酸素濃度・低重力・低速条件下での燃え拡がり実験を行う.また,小型区画を用いた火災実験を行い,ゴースティング火炎発生条件を明らかにする.両者を比較し,火炎からの熱フィードバックから切り離された条件下での火炎維持メカニズムを研究期間内で明らかにする.昨年度までの低酸素濃度・低重力・低速条件下での燃え拡がり実験では,熱慣性の影響を明らかにするための実験を実施し,これまでの実験で使用していた薄いセルロースシート試料では,落下時間と比較し熱慣性の影響は十分小さいことがわかった.また,昨年度までに小型区画火災実験装置の構築を行い,ゴースティング火炎の発生が見られることを確認した.今年度は小型区画火災実験を本格実施し,ゴ^スティング火炎発生条件を明らかにした.ゴースティング火炎発生時の床面付近の温度は300℃程度であり,酸素濃度は16~10vol.%程度であった. 通常の条件下であれば,消炎条件の酸素濃度は18vol.%程度であり,通常より低い酸素濃度で火炎が維持されることがわかった.一方,ゴースティング火炎発生直前には区画上部の温度低下が見られ,この際に燃料容器内の燃料は沸騰していることが観察された.以上より,燃料の気化が急激に進んだことで区画内の混合が進むとともに,周囲空気より重い燃料蒸気が区画内で予混合気層を形成することが考えられる.これにより区画下層の酸素濃度は低下するが,温度差が低下することで浮力流れの速度が低下し,燃焼反応の化学反応速度と同等程度に低下することで,低酸素濃度環境でも火炎を維持できるものと推察される.
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