研究課題/領域番号 |
19K04926
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏典 日本工業大学, 先進工学部, 教授 (20426258)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 減速意図予測 / 多重追突事故防止 / パーティクルフィルタ / デュアルフィルタ / 状態推定法 / オンラインパラメータ推定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自車の前方を走行する先行車の減速意図をその制動灯の点灯前に予測する技術を高精度化し、これを自動運転技術の枠組みで設計したのち、その被害が顕著な多重追突事故防止への効果を検証することである。 2020年度は、減速意図の予測と追従モデルパラメータの推定を同時に行う数理モデルをさらに精緻化することを試みた。2019年度に確立した手法では,一部の評価データに対して適切な出力が得られない等の不具合があったため,定式化そのものから見直しを図った。この結果,適切な出力が得られるモデル開発に成功した。 2020年度はさらに,多重事故防止を目的とする自動運転技術の開発を念頭に置き,追従モデルのパラメータのうち,これまで定数としていた「車両反応時間」を,同時推定の枠組みの中でオンラインで推定する技術開発に取り組んだ。車両反応時間までリアルタイムに推定することが可能になれば,例えば10台程度の車群全体に対して,1台ずつのモデルパラメータと車両反応時間を推定することにより,車群全体の振る舞いを数秒先まで予測することが可能になる。そして,予測された状態に対して,車群全体の危険性を低下させるような自動走行制御アルゴリズムを検討することが可能となる。定式化と数理モデリングを複数検討した結果,アンセンティッドカルマンフィルタに代わり,パーティクルフィルタを用いて車両反応時間についてもオンラインで推定する技術開発に成功した。 2021年度(最終年度)は,モデルパラメータと車両反応時間の推定10台程度の車群全体に対して実施し,車群全体の数秒先の状態を予測する試みを行う。さらに,この予測値に対して車群安全を向上させるための制御アルゴリズムを開発し,その効果を検証することとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の先行研究でもあまり扱いがなされていなかった「車両反応時間のオンライン推定」に成功したことで,車群全体の将来予測が可能になり,自動運転の枠組みでの車群安全化制御技術の提案への道が開けた。このため,研究は順調に進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度(最終年度)は,モデルパラメータと車両反応時間の推定10台程度の車群全体に対して実施し,車群全体の数秒先の状態を予測する試みを行う。さらに,この予測値に対して車群安全を向上させるための制御アルゴリズムを開発し,その効果を検証することとする。オンライン推定は,これまでのアンセンティッドカルマンフィルタでは,特に車両反応時間の推定が困難であったため,これに代わり,パーティクルフィルタを用いる手法を用いる。 新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から,大規模なドライビングシミュレータ実験は見送ることとし,これまで取得したデータ(ドライビングシミュレータ実験及び実車走行実験)から適切なデータを利用して評価検証することとする。 また,車両10台程度のオンラインでのパラメータ推定と将来予測に対しては,予想以上の計算機の負荷が生じ,相応の処理能力を持つ計算機の導入が不可欠であることが予想されるため,これらの設備を導入して研究を実施し,当初の目標を達成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的な蔓延に伴い,予定していた国内学会,国際会議が全てオンライン開催となったため,予定した旅費の執行ができず,繰越金が発生している。しかしながら,車両10台程度のオンラインでのパラメータ推定と将来予測に対しては,予想以上の計算機の負荷が生じ,相応の処理能力を持つ計算機の導入が不可欠であることが予想されるため,これらの設備を導入して研究を実施し,当初の目標を達成させる予定である。また,必要に応じてドライビングシミュレータ実験の外注も検討し,質の高い評価データの確保を検討する。
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