研究課題/領域番号 |
19K04927
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
世木 秀明 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (60226636)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 公共放送 / 非常放送 / 放送文 / 理解度 / 聞き取りやすさ / 心的辞書 |
研究実績の概要 |
2019年度から2021年度の研究成果をもとに、聴取実験を行い検討した。具体的には、主に20代健聴成人を対象にした聴取実験により①知識情報が放送文理解に与える影響、②雑音環境下における放送文の話速設定方法に関する検討、③文構造の違いが文理解に与える影響に関する検討を行った。 ①の実験結果から、知識情報を利用可能と考えられるターゲット単語を含む放送文は、そうでない放送文に比べて放送文理解度が有意に高くなることが観測された。この結果から、聞き手に伝えたい内容(キーワード)を想起させ易い放送文作成が重要であると考えられた。また、②の実験結果から、雑音環境下では話速が400モーラ/分程度の放送文の理解度と比較して放送文全体の話速を0.8倍遅くした放送文の理解度と聞き手に伝えたいキーワードのみの話速を0.8倍遅くした放送文の理解度が有意に高くなることが観測された。しかし、文章全体の話速を遅くした場合とキーワードのみの話速を遅くした場合の放送文理解度間には有意な差は見られなかった。この結果から、雑音環境下では放送文全体の話速を遅くすることが理解度向上に繋がることに加え、放送文理解を助けるキーワードのみの話速を遅くすることでも理解度向上に繋がることが示唆された。 さらに、③の実験では、「X がY にZ を~した。」の形式を持つ文を基本語順文(文型1)と定義し、文型2 「Y にX がZ を~した。」、文型3 「Z をX がY に~した。」、文型4 「Z をY にX が~した。」の4文型の放送文を作成し、文構造の違いが放送文理解度に与える影響について検討した。その結果、文構造の違いが放送文理解に大きく影響し、文型4 が最も理解しにくい文構造であり、文型3 が最も理解しやすい文構造であると考えられた。これより、分かりやすい放送文作成には文構造の検討も重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウィルス感染防止のため注意を払い慎重に聴取実験を行った。この結果、2021年度までに行った聴取実験では被験者数が少なく、特に、高齢者を対象とした聴取実験は、ほとんど行うことができなかった。2021年度までに行った聴取実験結果を基に研究成果をまとめるには不充分であると考えられることから、特に高齢者における音声知覚過程についての検討を加えるために1年間の補助事業期間延長を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度から2021年度の研究成果をもとに、さまざまな音声聴取環境下での音声知覚過程における心的辞書の活用のされ方や音声情報処理能力と加齢の関係について聴取実験を行い検討を加える。ここで、聴取実験は、新型コロナウィルス感染予防を念頭に慎重に進める予定である。 さらに、本研究で得られた知見をもとに駅や公共施設において聞き取りやすく理解しやすい放送方式や注意・喚起の行い方などについての提案を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由):コロナウィルス感染防止を考慮して聴取実験を行ったため、2020年度および、2021年度に行うことができた被験者数が非常に少なく、特に、高齢者を対象とした聴取実験をほとんど行うことができなかったためである。 (使用計画):1年間の補助事業期間延長を行い、当初の予定通りの研究計画を進める。また、前年度から繰り越した研究費は、被験者謝金および、環境騒音収録やビデオ撮影に使用する記録用メモリーなどに充当する。
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