研究課題/領域番号 |
19K04928
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中西 美和 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70408722)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 覚醒維持 / 内発的動機づけ / 自動運転 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、人の内発的動機づけを誘発することは覚醒水準の維持に繋がるとの仮説に立ち、これを検証するとともに、特に安全致命性の高いオペレーションに従事する人への応用を目指して、内発的動機づけの誘発による覚醒水準維持手法を確立、最適化することを目的としている。本研究課題は、以下のフェーズ0~フェーズ3によって構成される。 フェーズ0)心理学領域の知見に基づいて内発的動機づけを誘発する手法を具体化する。 フェーズ1)内発的動機づけを誘発する情報をオペレータに提示した場合、覚醒水準が維持されるかどうかを各種生理指標計測を含む実験により、統計的に明らかにする。 フェーズ2)より効果的な内発的動機づけ誘発のための情報提示方法を探索するために、個人の時系列の心理状態及び覚醒水準を計測し、その変化を学習によって予測し、それに基づいて高い確度で情報提示する方法について検討する。 フェーズ3)外的刺激による覚醒維持手法(音、振動、ガム咀嚼)と比較した、提案手法の優位性を実験的に検証する。 20年度までで、フェーズ0)~2)は完了しており、フェーズ3)の予備実験が完了している。20年度前半は、Covid-19によるキャンパス閉鎖等の関係で、実験室での被験者実験に難が生じたため、フェーズ3)の本実験に着手するには至らなかった。しかしその代償として、フェーズ2)の覚醒水準の推定モデルの構築について、精度を上げるための検討をより充実して行うことができた。特に、その時点での覚醒水準ではなく、数十秒後の覚醒水準の低下をプロアクティブに予測するモデルへと発展させることができたため、覚醒維持のための内発的動機づけを誘発する情報を覚醒水準が低下する前段階で提示することが可能になると考えられ、本研究課題の計画段階で構想していた手法よりも、より有効な手法を確立できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、全ての被験者実験を含んでおり、特に20年度前半は、Covid-19によるキャンパス閉鎖等の関係で、実験室での被験者実験を行うことが不可能であった。また、世界的な物流の滞りにより、実験に必要な機材の調達も計画通りに行うことができなかった。このことで、実験の実施の面では、当初の計画より遅れを生じたが、一方、キャンパス閉鎖期間に、実験ではなく、覚醒水準の推定モデルの精度を上げるための検討に注力する方針に切り替えたことで、当初計画していたその時点での覚醒水準を推定するモデルから、さらに数十秒後の覚醒水準をプロアクティブに予測するモデルへと発展させることができた。このことは、覚醒維持のための内発的動機づけを誘発する情報を、覚醒水準が低下する前段階で提示することが可能にするものと考えられ、本研究課題の計画段階で構想していた手法よりも、より有効な手法を確立できる可能性があると考えている。 Covid-19の影響により、20年度の当初計画は変更を余儀なくされたものの、代償として行った分析により、最終的な本研究課題の成果は、より優れたものになることが見込まれる。また、20年度中に、実験室の感染予防対策のための措置も整えたため、21年度前半で、20年度に計画していた被験者実験はすべて終えられる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
21年度は、本研究課題の最終年度になるため、20年度に計画していた本実験を完了させることと、成果をまとめることの2点に注力する予定である。 実験機材の調達については見込みが立っており、実験装置を整備したうえで、21年度前半に、覚醒水準の低下をプロアクティブに予測し、内発的動機づけに基づく情報提示を適時的に行った場合の有効性について、従来の覚醒水準維持手法(音、振動、ガム咀嚼等)との比較を、被験者実験によって行う。具体的には、覚醒水準の低下が懸念される自動システムの監視時を想定したシミュレーション実験を行い、各刺激を提示した場合の被験者の覚醒水準の変化を測定する。 21年度後半は、これまでの実験結果を総合的に再検討し、実システムに応用する方策と課題についてまとめる予定である。計画段階では、人間工学に関連した国際会議での成果報告を予定していたが、Covid-19の影響により、現地での発表等は困難であることが予想されるため、国際的なジャーナルへの投稿を中心に、成果の発信を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は、全ての被験者実験を含んでおり、特に20年度前半は、Covid-19によるキャンパス閉鎖等の関係で、実験室での被験者実験を行うことが不可能であった。この影響を受けて、20年度の実施計画を、被験者実験によるモデルの検証からモデルの精度向上のための検討に切り替えた。これに伴って、実験機材の調達(実際には、物流の停滞により調達困難であった)と被験者実験に伴う消耗品及び謝金等の費用は21年度に使用することとし、そのため、助成金の一部を残した。 20年度中に、実験室の感染予防対策のための措置を整えたため、21年度前半で、20年度に計画していた被験者実験はすべて終えられる予定であり、20年度から繰り越した助成金についても、計画通り使用する予定である。
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