研究課題/領域番号 |
19K04943
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
井上 研一郎 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部マテリアル応用技術部プロセス技術グループ, 主任研究員 (00620436)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 有機溶剤蒸気 |
研究実績の概要 |
工場、作業場において発生する有機溶剤蒸気の触媒処理には、通常300~350℃程度の温度が必要となる。 塗装や印刷で使われる典型的な溶剤を芳香族炭化水素類と非芳香族類に大別した場合、白金従来触媒は前者を概ね250℃以下の低温で、Co-Ce酸化物触媒は後者(白金従来触媒と比較し、特に酢酸エチル、酢酸ブチル)を低温で処理することができる。独自に提案するCo-Ce酸化物と白金を組み合わせた新規触媒を用いることにより、両者を同時に低温で処理することを目指した。従来から典型的に用いられている塩化白金酸を原料に用い、Co-Ce酸化物上に白金を担持しても凝集が進み、活性が低下した。分散剤で保護された白金コロイドを原料に用いることにより、白金の高分散担持に成功し、両者を200~250℃程度で処理できることを過年度、明らかにしている。本年度は、昨年度に引き続き、焼付炉・乾燥炉内の有機溶剤蒸気を処理するため、約300 L恒温槽内において気化させたシンナー蒸気を酸化(燃焼)させるプロセスを評価した。触媒反応後のガスの組成を調べると、市販白金担持アルミナ従来触媒では酢酸エチル、酢酸ブチルが残存し、Co-Ce酸化物触媒(白金担持なし)では主にトルエンが残存し、上記と同様の挙動が確認された。また、Co-Ce酸化物触媒では酢酸エチルの加水分解成分としてエタノール等が観察された。白金担持Co-Ce酸化物触媒ではこれらの成分がほぼ残存することなく、230~250℃の領域においてシンナー成分をほぼ完全酸化させることができた。Co-Ce酸化物触媒、白金担持Co-Ce酸化物触媒では200℃付近で炭素析出が認められた。一方、白金担持アルミナ触媒では析出は認められなかったが、230℃程度で多環芳香族類の副生成が顕著に認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のとおり、焼付炉・乾燥炉内の有機溶剤蒸気処理に関するプロセス評価を行い、成果は査読付き原著論文として国際的に公表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は反応時における触媒表面の燃焼熱を測定し、処理プロセスを総合的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度入手分の触媒原料、計測用消耗品を利用したため、次年度使用額が生じた。触媒関連の物品費等に充てる計画である。
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