研究課題/領域番号 |
19K04951
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮縁 育夫 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (30353874)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マグマ水蒸気噴火 / 噴火堆積物 / 層序学的調査 / 物質科学的検討 / 火山活動推移 |
研究実績の概要 |
近年,わが国の活火山で頻発するマグマ水蒸気噴火は,顕著な前兆現象が検出されずに発生することが多く,人命や火口周辺の施設に甚大な被害を及ぼすなど,防災上極めて危険な噴火現象の一つである.本研究では,阿蘇火山中岳を主な調査対象として,(1)最近の事例(2015~2016年)の映像記録や堆積物の層序・特徴から,どのような噴火推移をたどっているのか,(2)過去の噴火記録・歴史文書の精査と火口周辺域の調査から,その発生頻度と爆発的噴火に至る過程を歴史学的・層序学的に明らかにする.また,(3)近年および過去数千年間における同噴火堆積物および上下の火山灰層の顕微鏡観察や化学分析を行って,マグマ水蒸気噴火への推移と発生には共通した特徴が検出できるのかどうかを物質科学的に検討する.そして(4) 阿蘇火山中岳をはじめとする火口湖を有する火山における将来のマグマ水蒸気噴火の発生予測や噴火災害軽減に向けた提案を行うことを目的としている. 初年度にあたる令和元年度は,阿蘇火山中岳第1火口において最近のマグマ水蒸気噴火が起こる直前の2014年11月~2015年5月のマグマ噴火に焦点を当てて,降灰調査にもとづく火山灰噴出量などのデータを整理して活動全体の推移を明らかにし,マグマ水蒸気噴火発生前の活動状況を検討した.この活動において,最初の2か月間は相対的に高い噴出レートで火山灰が放出されたが,3か月目以降は初期の1/3以下の噴出レートで推移した.2015年5月までの約6か月間における噴出物総量は約200万トンであり,過去数10年間では比較的小規模な活動だったといえる.その成果は国際学術雑誌(インパクトファクター付きの査読論文)に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の主な調査対象である阿蘇火山中岳では2019年前半から火山活動が活発化し,同年4月には噴火警戒レベルが1から2に引き上げられ,初年度に予定していた火口周辺域への立入と調査が実施できない状況となった.その状況は現在も継続している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の特徴は,わが国でもっとも活発な火山の一つである阿蘇火山中岳を主な対象として,野外調査をベースとした研究を実施することである.とくに,中岳第1火口周辺域での噴出物調査が最重要であるが,2019年4月より噴火警戒レベルの引き上げにより,安全上の問題から現地調査を行えない状況が現在も続いている.活動が静穏化して噴火警戒レベルが引き下げられた時には直ちに現地調査を開始する予定である.しかしながら,現在の火山活動の推移を予測することは難しく,令和2年度も火口周辺域へ立ち入れない可能性も考えられる.そこで,過去の噴火記録と歴史文書の精査や,遠方域でも実施できる過去数千年間の噴火履歴調査,これまで採取している噴出物試料の観察や分析なども検討し,研究課題全体のとりまとめにむけて全力で取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主な調査対象である阿蘇火山中岳では2019年前半から火山活動が活発化し,同年4月には噴火警戒レベルが1から2に引き上げられ,令和元年度に予定していた火口周辺域への立入と調査が安全上の問題から実施できない事態となり,進捗状況が遅れている.過去の噴火発生履歴を高精度に把握するために,放射性炭素年代測定を実施する予定であったが,現地調査が行えなかったため,試料が得られず,分析を依頼することができなかった.次年度は現地調査が可能になることを期待して,本研究の目的を達成するために必要な噴出物試料や放射性炭素年代測定用試料の発見に努めるとともに,研究補助も活用して課題全体のまとめにむけて全力で取り組む予定である.
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