研究課題/領域番号 |
19K04956
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
渡辺 浩 福岡大学, 工学部, 教授 (60244109)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 流木材 / 木材利用 / 災害復旧 |
研究実績の概要 |
平成29年7月九州北部豪雨で発生したおびただしい量の流木の有効利用を図るべく、基本情報となる強度性能の試験を行った。試験体として、筑後川中州に漂着した損傷が大きいと考えられる「流下材」、東峰村で表層すべりにより倒れた「倒木材」、と付近の厳木ダムで翌年採取された「漂着材」について、外観目視で選別した後3点曲げ破壊試験に供した。その結果、以下のことがわかった。 1.流下材の一部を除いて大半の材は設計基準強度を上回ったことから、使用にあたって強度性能的な問題はない。2.基準強度を下回った材は流下時の損傷により外観目視評価も悪かったことから、外観選別でこれらを除去できる可能性がある。3.強度は倒木材>漂着材>流下材となると予想されたが、漂着材が最大であった。これは原木の強度が大きかったためと考えられる。4.すなわち、流木材の強度的なダメージは原木の強度のばらつきの範囲内であり、適切に外観選別すれば利用に当たっては問題はない。 なお、試験にあたって長さを調整するために木口部をチェーンソーで切断したが、微細な砂が混入していたせいか刃物の傷みが大きかった。これは流下材が最も顕著であった。また倒木材について製材工場で製材を試みたが、同様に砂の混入が懸念され、火災の原因にもなり得るため断念した。これらのことから、流木材を利用するにあたっては、加工を最小限にとどめられるようなアプリケーションが求められると言える。また、流木の発生には計画性がないことから、イベント的な利用法、すなわち災害復旧現場での利用が好ましいと考えられる。 また、被災地に設置される流木集積場に発生源の区別なく搬入されていることから、利用率を向上させるには搬入場所を分けることが求められる。また、材としての価値が高い樹幹部が優先的に搬出・焼却処理されていることから、この改善も求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度と2年度目に流木材の強度性能を求める試験を実施した。ここでは3箇所の異なる場所から改修した流木材を対象に外観目視と破壊試験を行い、外観での損傷度が大きいものを除外すればいずれも設計で使用する強度は保持していること、実用上は設計強度を2割程度低減させれば問題なく利用できることがわかった。このことを踏まえ、具体的な利用方法について検討を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これらの利用方法を具体的な事例とともに示していく。流木は、災害時に一部エリアのみに常時利用量の数十倍というおびただしい量が発生することや、混入土砂により機械加工にも難があることがわかっている。このような発生量の偏りと難加工性を考慮し、最小限の加工で利用可能であり、災害後に大量の資材を必要とするな災害現場での仮設土木資材への利用が望ましいと考えている。そこで、親杭横矢板工法の柵板、流路工等への利用を想定し、検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
流木材の活用法として、災害対応用土木資材として親杭横矢板の柵板や流路工への活用を想定した研究を進める予定であった。このような例は少ないため、平時に土木資材として木材を活用している行政機関、資材供給業者、施工業者等に聞き取りを行い課題を探ることを想定していた。しかしながら新型コロナウィルス感染症の影響により、この2年間は動きが制限され、十分な研究活動を行うことができなかった。このため、1年間の延長をいただき成果のとりまとめまでを行いたいと考えている。
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