研究課題/領域番号 |
19K04957
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
新保 泰輝 石川工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (20572697)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Peridynamics / 進行性破壊 / 破壊力学 / 地盤工学 / 災害 |
研究実績の概要 |
物体が逐次分離して最終的に崩壊に至る『進行性破壊』の科学的解明を行い,土砂災害の予測精度を向上するためには,亀裂の進展を扱う破壊力学による考究が必要不可欠である.本研究の目的は,亀裂進展解析手法であるPeridynamicsを地盤工学へ援用できるように改良し,亀裂進展形状と外力・地盤特性の関係を明らかにすることである.本研究では,地盤の亀裂進展解析コードを開発する.その後,解析や実験再現により毎年大きな被害をもたらす地滑り等の科学的解明を進め,進行性破壊予測のイノベーションを図る.これにより,土砂災害による人家・人的被害のない豊かな社会の実現を目指す.本年度は前年度までに開発した解析コードを用いて一軸圧縮試験の再現解析を行った.また,地震応答解析が可能なPeridynamicsに対する二次元効果を考慮した精度検証を実施し,盛土の破壊形態の地盤特性による違いについて検討した.更に,Drucker-Prager弾塑性モデルを導入した解析コードに対して,従来法に比べて高速なアルゴリズムを開発し,FEMとの比較検証を実施した.一方,再現解析のために亀裂を有する青粘土の一軸圧縮試験を実施した.本試験を実施するための円柱供試体への亀裂挿入方法の提案とその妥当性ならびに各種条件での実験結果について報告した.この試験結果を踏まえて次年度は,更なる再現解析を実施する.また,試験結果の平均化を目的として追加の一軸圧縮試験を実施する予定である.一方,弾塑性モデルの破壊靭性値として有用な仕事変化率について検討を行い,仕事変化率に対するE積分の経路独立性や各種パラメータの与える影響について報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は解析コードの修正を実施した.解析コードについては GPUならびにマルチGPU化も完了している.前年度開発したDrucker-Prager弾塑性モデルの解析コードに対し,従来法に比べて比較的高速な弾塑性解析のアルゴリズムを開発し,精度検証としてFEMとの比較を行った.その結果,FEMと同程度の精度を担保しながら,従来のアルゴリズムに対して1.3倍程度の高速化を図った.また,前年度までに開発した解析コードを用いて一軸圧縮試験の再現解析を行った.一軸圧縮試験結果に対して破壊靭性値によるキャリブレーションを実施した結果,荷重荷重点変位や破壊形態が一定程度再現できる結果を得た.ただし,破壊進展状況等の再現や延性的な挙動を示す場合の再現には至っていない.更に,地震応答解析が可能なPeridynamicsを用いて破壊形態と地盤物性値の関係を明らかにするために,地震時の盛土の破壊形態の検討を行った.加えて,再現解析のために亀裂を有する供試体の試験方法の確立と一軸圧縮試験の実施を行い,報告した.弾塑性材料の破壊靭性値となる仕事変化率に対して従来法を用いた解析から経路独立性やパラメータに対する感度を明らかにし,報告した.以上のことから,当初計画に対して順調といえる.
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今後の研究の推進方策 |
亀裂を有する粘性土の一軸圧縮試験の平均化を目的として追加の一軸圧縮試験を次年度前半に実施する.並行してDrucker-Prager弾塑性モデルを導入した解析コードを用いていくつかの一軸圧縮試験結果の再現解析を実施し,地盤物性と各種パラメータの関係を明らかにして本解析コードの妥当性を示す.次年度中盤に自重ならびに地震時の盛土形状の解析を実施して破壊形態と地盤物性やPeridynamicsのパラメータとの関係を明らかにする.その後,被災事例等に対するケーススタディを行う.もって,研究目的である亀裂進展形状と外力・地盤特性の関係を明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計上していた学会出張旅費が,学会が遠隔会議等に変更されたことで旅費自体の発生がなかったためである.これらについては次年度実施予定の圧縮試験に係る消耗品や論文掲載料等に用いる計画である.
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